第117話 冒険者ギルド

 ウルルスとティアが昔所属していた冒険者ギルドの最低採用年齢十二歳からでランク制である。最初のFランクから最高のAランクまで存在するのだが、FランクからEランクはほとんどが薬草採取などのお使いクエストだ。一定の達成数でDランクに昇格する。魔物の討伐クエストはDランクからであるが、二名まで下位ランクの者を同行させることが出来る。幻のSランクなんてモノもあるらしいのだが、噂だけで実際見た者はほとんどいない。ウルルスはCランク、ティアはDランクで冒険者ギルドを辞めている。

 ランクと強さは比例しない事が多い。実力で言えばウルルスはSランクでも不可能な任務をこなす事が出来るし、ティアの実力は実際はAランクの依頼をこなせるレベルだ。二人とも冒険者ギルドのランクを本格的に上げる前に辞めてしまっているので、酒場などで冒険者ランクを聞かれて舐められる事もあるが、本人達はまるで気にしていない。戦えばどちらが勝つか分かり切っているからだ。

 頭の弱い冒険者はランクが強さの証と考える者が多いので、ウルルス達の本当の実力を知らない冒険者が賞金稼ぎになることが多々ある。多くの賞金稼ぎになった冒険者が消息不明になっている事実を考えれば分かりそうなモノだが、馬鹿な冒険者達は今日もウルルス宅にやって来る。

「武の為なら死地にさえ赴く武人ならともかく、何故こうも死にたがるんでしょう……。理解に苦しみますね」

 攻撃魔法の連弾で物言わぬ死体と化した冒険者の成れの果てを見つめながらティアは一人呟く。

「誰も留守番に魔法士が二人も居るとは考えなかったのでしょう。この大量の死体はどうしましょう?」

「ああ、それは墓守さんに頼めば無料で片付けてくれますよ?」

「それは便利ですね。暗殺者が一番困るのは死体の処理ですからね……」

「殺したら放って置けばいいじゃないんですか?」

「私は暗殺者からお嬢様を守る護衛の任務が多かったですから、屋敷に残った死体を処理する穴掘りの方が得意になってしまいましたね」

「お金持ちは色々と大変ですね……」

「金持ちと言うのも有りますが、お嬢様は敵を作りやすい性格でしたからね」

「うへぇ、そんな人がご主人様の嫁の一人になるのは勘弁ですね……」

「それは、多分無いでしょう。ウルルス殿の運気は凄いですからね」

「むしろ幾つかのカジノを潰してないか心配です……」

「カジノ王の資産は全世界の約二割と言われてますから大丈夫でしょう」

「その財産を放棄してまで結婚したくない人ですか。会いたいような、会いたくないような……」

「とても可愛らしい人ですよ。性格に難は有りますが……」

「あのご主人様が嫌がる性格って一体……。全く想像できません」

「ティアさんソフィアさん昼食が出来ましたよ~」

「師匠、私はちょっと墓守さんの所まで行ってきます」

「ああ~。夏場ですからね。腐敗が早そうですね」

「ソフィアさん、フェイさんと師匠の護衛任せました」

「後続はいないようですのでゆっくりでいいと思いますよ?」

「庭に死体がある昼食は嫌です」

「それは私も勘弁ですね」

「戦場でご飯を食べられなければ、死にますよ?」

「脳筋の師匠と一緒にしないで貰えます?」

「私だっていい気分では無いですが、昼食前に終わらせるって言ったのはティアさんでしょう!」

「はいはい。こんな事で喧嘩しないのご飯が不味くなるわよ?」

「「はい、わかりました」」

「何となく上下関係が分かってきました」


 

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