第111話 それぞれの反応

 不死の魔女は恐怖の代名詞である。

 子供の頃に悪さした人間ほど怖がる傾向にある。もう封印されているのだが、それを知らない者達ばかりなので、今でも子供の脅し文句として使われている。

「不死の魔女ですか……。兄上が言うなら本当なのでしょう」

「ホントにルドルフは素直だな」

「居る訳ないだろ不死の魔女なんて、馬鹿らしい」

「墓守は信じない派か」

「ちなみにどこに封印したんだ?」

「絶対に言わない」

「ほら、嘘だ」

 たまに煽って封印場所を聞き出そうとする者もいるので、この手のあしらい方も覚えた。

「封印場所はちょっとした冒険気分が味わえる場所だよ。並の人間にはたどり着けないさ」

「嘘くさい……」

 本当に命が幾つあっても足りないのでは無いかと言う場所に封印してある。竜の巣の卵の横とか、罠だらけの地下迷宮の隠し扉の宝箱の中とか、そのくらいの難易度だと思って欲しい。

「ウルルスの家族だって信じて無いだろ?」

「賛成三、反対一だな」

「ティア、フェイ、ローガンが信じて、ロイが信じてない感じか」

「人の家の事情に詳し過ぎやしませんか、墓守さん」

「信頼度の問題だろう。フェイはウルルスの言葉なら信じるだろうし、ローガンはフェイに従う。ティアはウルルスを盲信しているからな……」

「良くお分かりで」

「不死の魔女がおとぎ話なら、王都で見つかるという心臓を抉られた死体は何ですか?」

「それは魔女信仰者の心臓食いだ。心臓を喰らう事で不死になれると信じてるおバカな連中だよ」

「では、不死の魔女の不死の理由は何です?」

「賢者の石だよ。アイツは錬金術師でもあってな賢者の石の生成の唯一の成功者なんだ。レシピを知っているからみんな封印場所を知りたがるのさ」

「なるほど、不死は確かに魅力的でしょうね……」

「賢者の石は争いの元だから封印したんだよ」

「は、眉唾だね」

「みんながみんなそうだと助かるんだがな……」

 本当に不死の魅力に取りつかれた人間はなりふり構わずやって来る。その先に死が在るとしても……。

「不死の魔女が復活する可能性は?」

「ゼロじゃない。それくらいの確率だな……」

「やっぱり嘘か」

 ホントに墓守はリアリストだなぁ。それでなくては町長に任命した甲斐が無い。

 不死の魔女には不意打ちで勝てたが、今度は五分以下の戦いになるだろう。復活した不死の魔女に付き従う者もいるだろう。

「ホント、不死の魔女を封印したことを喧伝した前ギルド長は俺の手で殺したかったよ……」

「前ギルド長の死因は何ですか?」

「アルコール性肝炎だ。要は酒の飲みすぎだな」

「締まらない死因ですね」

「ホントにな……。現ギルド長が就任した後のごたごたも俺が収めたんだよなぁ」

「意外と苦労性ですね兄上」

「若い時の苦労は買ってでもしろっていうだろう?」

「兄上は叩き売りで買ってるような気がします……」

「言うなよ、泣きたくなる」


 




 

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