第107話 不死の魔女
不死の魔女の年齢は伝承では八百歳を優に超え。王国内でも心臓を抉られた被害者は三千人は下らないし、攻撃魔法で亡くなった人間は二万に届く。
天才錬金術師であった不死の魔女は超一流の攻撃魔法士でもあり。唯一の賢者の石の成功者でもある。出会った時は肉体年齢は十七歳ほどだが、精神年齢はもっと幼かった気がする。
不死の魔女の暗殺依頼をしたのは前ギルド長のジャンだった。カリア達の父親だったが、暗殺者ギルドで頭角を現してきたウルルスが目障りだったので依頼自体がジャンの無茶ぶりだった。暗殺ではなく封印だったので仕事の報酬は支払われていない。前から良くなかったジャンとウルルスの仲は冷戦状態に陥った。
ウルルスは頑なにジャンに封印場所を教えなかった。しかし、不死の魔女がウルルスに倒されたことをジャンは暗殺達に喧伝した。ウルルスが不死を求める人間達に追われ始めたのはその頃からだ。
カリア達には悪いがウルルスは彼女たちの父親のジャンが嫌いだった。カリア達がおこずかいの全てを使って用意してくれた魔法障壁無効化が付与されたナイフが無ければ不死の魔女に殺されたのはウルルスだっただろう。
ジャンが病気で亡くなった今でも少し根に持っている。暗殺者ギルド長らしかぬ酒場のマスターとしての葬式にも行っていない。葬式は万が一でも身元がバレる可能性があったので行きたくても行けなかったが、ウルルスは純粋にジャンの葬式にも墓参りにも行く気がなかった。
不死の魔女の封印が一つでも解ければ、彼女の復活は必至だ。体が再び集まろうとするから次の封印場所が分かってしまうのだ。胴が海の魚の餌になったとしても無限に再生するので無事のはずだ。もし漁師の網に掛かったとしてもナイフの突き刺さった胴体など普通は不気味過ぎて見なかった事にして捨ててしまうはずだ。
胴体だけでは移動できないので大丈夫だろうが、一部の死体愛好家の手に渡っていたら話は変わってくる。いつまでも腐らない新鮮な死体を愛でるかも知れない。もしかしたら死体の残りのパーツを集め始めるかもしれない。かもしれない、かも知れないの限りなくゼロに近い可能性だが、ゼロではないのだ。
復活した彼女は殺した(?)ウルルスに必ず復讐するはずだ。ウルルスが死んだ後でも彼の子供たちにその復讐の的にするはずだ。それだけの仕打ちをしたが、それは逆恨みに近い感情だろう。心臓を好物にしている猟奇殺人者であるし、世界に戦争を巻き込むほどの秘宝である賢者の石の生成レシピを知っている唯一の人物だからだ。永遠の若さと不死を与える賢者の石を求めて争いが起きるのは必定だからだ。
ウルルスは世界を破滅に追い込む人物を封印した。その場所を誰にも教える気もないが、万が一でも復活してしまったら倒せるのはウルルスだけだろう。
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