第100話 果たし合い
ローガンの叔父、ラムサス・デェートがやって来たのは手紙が届いてから三日後だった。替え馬を乗り継いで最速でやって来たようだ。三頭の馬たちがだいぶ疲弊していた。
「最速で来たわね。かなり本気ね相手は……」
「お久しぶり叔父上」
「おお、ローテシア。息災か?」
「ローテシア?」
ローガンは偽名だったようだ。男装してたし、名前くらい変えるか……。
「貴様がウルルス・コルか」
「お初にお目にかかる。ラムサス・デェート殿」
「逃げないでいたのは褒めてやろう。ふざけた名前しおって、伝説の暗殺者に殺されても文句言えんぞ?」
ウルルスの名前を知っているのは武の世界に居れば当然としても流石に目の前にその伝説の暗殺者が居るとは思わなかったのだろう。
「本名なんだが……」
「貴様は二十代前半ではないか、伝説の暗殺者は四十手前。年齢が違いすぎる」
「まあ、そう思うわな。活性で若さを保ってるんだが……。信じてもらえないんだろうな」
「死合う準備は出来ているようだな……」
ウルルスの姿を見てラムサスは剣を抜く。珍しくウルルスは腰に剣を下げていた。ローガンの剣を借りて、ここ最近は剣の修行もしていた。実力者が見れば剣の力量も分かるだろう。
「出来れば死合うのは止めないか?」
「可愛い姪を手籠めにした罪、命を持って償え」
逆レイプされたんだけど、などと言ったら即座に切りかかって来そうだ。
「しょうがないか……」
剣を抜き構える。本当は剣を投げ捨てて素手で戦いたいのだが、それは剣術家の逆鱗に触れそうだ。
「ランドルフ古流剣術……。同じ流派を使わせてもらうよ」
「ローテシアに習った程度で私に勝てるとでも?」
言葉を尽くして説得できる相手ではない。さて、どれだけ通用するか試してみよう。ランドルフ古流剣術は一撃必殺を旨とする。同じ流派では同士討ちが関の山だが、それは力量次第でひっくり返せる。
「貴様はランドルフ古流剣術の秘技を持って一撃で仕留める!」
「ああ、やっぱりか……」
最悪の事態だ。ランドルフ古流剣術の秘技は見たことが無い。ガルシアの秘技の練習なんて見たことが無いからだ、初見殺しなら死んでしまうだろう。
「行くぞ!」
「……」
身体強化魔法での最速での踏み込み、袈裟懸けではなく喉を狙った最速の突きだった。
「ふっ」
意識の無意識に入り込み、左に避けると同時に剣の腹で横なぎに切り払う。
「がはっ」
ウルルスの一撃でラムサスの肋骨がへし折れるのが見ていた皆にも分かる。速度重視で鎧を着てなかったのが災いした。
「俺の勝ちでいいか?」
「死合いだと! 言ったはずだ!」
体を走る激痛を堪えてラムサスは一撃必殺の秘技をもう一度使おうとするも、その攻撃がウルルスに届くことは無かった。手加減抜きの脳天のへの一撃を受けて気絶したからだ。
「どんだけ元気だよ、肋骨確実に折れてるのに……」
「叔父上は大丈夫ですか?」
「まあ、意識を取り戻したとしても自害しそうで怖いよな……」
「縛って猿ぐつわ噛ませておきましょう。治療もしなくちゃですし」
「骨折に回復魔法は向かないだが、やるだけやってみるか……」
治療をする前に縛ろう。治療中に暴れられても困る。
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