第44話 負け組

「なんで、あなた達が先に居るのよ!」

「驚きましたよ、既に記帳されてたのを見た時は……」

 フェイ達は夕方に着いた。ローガンは落ち着いていたが、フェイは今にも噛みつかんばかりだ、

「先に宿を取ってやったんだ、手間が省けたろ?」

「なんで一週間も居なきゃいけないのよ!」

「仕事のしすぎだ、たまには休めって」

「アンタに情報屋の何が分かるのよ!」

「いや、それはさっぱりだが」

 フェイは宿が用意したウエルカムドリンクを飲み干すと叩きつけるようにグラスを置く。

「高い酒をそう一気に飲まんでも……」

「うるさい!」

「ご主人様、謝った方がいいですよぅ……」

「どうせ先に来てお楽しみだったんでしょ!」

「それは想像にお任せする」

 フェイがビシッとベットを指差し、

「なんで一個だけ使った痕跡があるのよ!」

「それは使ったからだが……」

「この男はぬけぬけとぉ……」

 これはだいぶ機嫌が悪い。劣勢だ。

「悪かったって、ベスの居場所がどうしても知りたくてな」

「師匠の居場所? そんなの知らないわよ!」

「嘘つくなよ、心当たりぐらいあるだろ?」

「……。言いたくない」

「は?」

「言いたくないって、言ったのよ!」

「あ~。何となくわかった、女の所か……」

 ベスもお盛んである。まあ、見かけは三十台後半に見えるし、金も持ってる。若い女を引っかけるぐらい訳ない。

「なんで私の周りは好いた腫れたが多いのよ……」

「知らんがな……」

 ローガンは我関せずを貫いている。ティアは自分の分のウエルカムドリンクが果実水だと気付くと俺の分を飲み始める。

「女に興味ないフリして、こんな可愛い子を手籠めにするとわね!」

「人聞きの悪い言い方するなぁ、合意の上だよ」

「なんでお金持ってるのに私は負け組なのかしら……」

「人生はお金じゃないからじゃないか?」

「じゃあ、何よ?」

「愛ですよ、愛」

 ティアが勝ち誇ったように胸を張る。

「そう、なら略奪愛も愛よね?」

 フェイが笑いながらウルルスの元に近づく。蛇に睨まれた蛙の様に動けなくなるウルルス。逃げた方がやばい事になると本能が告げていたからだ。

「フェイ、止めとけ。後悔するぞ」

「もう後退の二文字はないわ、覚悟なさい」

 ローガンはティアを拘束する。目隠しと手錠を常備しているため鮮やかだった。

「ご主人様が犯される!」

「静かにしましょうね、口まで塞ぎたくないんです」

「ローガンは護衛兼従者でしょ! 止めなくていいんですか!」

「ああ、私も後で子種を貰いますから」

「は?」

「私は女ですよ? 気づきませんでした?」

「ご主人様、逃げて!」

「すまん、なんか縛られた……」

「この日の為に覚えた捕縛術が役に立ったわ」

 フェイの目は捕食者のそれだった。

「すまん、ティア。俺喰われるわ」

「こんなことなら、もっと搾り取ればよかった!」

「そんな感想求めてないだけど、ん」

 フェイの唇とウルルスの唇が合わさる。

「フェイ様、私の分も残して置いて下さいね」

「大丈夫よ、ここには一週間もいるんだから」

「えぇ、そうでしたね」

「ご主人様、生きて下さい!」

「俺も出来れば生きていたい……」

「天井のシミでも数えてなさい、すぐ終わるわよ」

「真っ白なのですが……」

「あっそう、下半身はとても正直で助かるわ」

「何に興奮してるんですか! ご主人様!」

「この状況全てにだよ!」

「その元気がいつまで持つか見ものね……」

 そこから先は余りよく覚えていない……

 

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