第43話 独占欲
ウルルスとティアは似た者同士だ。どちらも独占欲が強い。他の男にティアの裸体を見せたくなくてウルルスはわざわざ秘湯まで行ったのだ。その事をティアも重々理解していた。ウルルスにおんぶされながら呟く。
「ご主人様も大概ですね……」
「ん? なんか言ったか?」
「いいえ、なんでもないですよ」
「さっさと宿をとるぞ、湯冷めしたら風邪を引くからな……」
「どの宿にします? いっぱいありましたけど?」
「そうだな、フェイの性格からいって肩ひじを張らずにゆっくりしたいはずだから一番グレードの高い宿を選ぶはずだ」
「あちらは一流の情報屋ですから懐もあったかいでしょうしね」
「そういう事だ、先乗りした事にしてフェイとローガンの名前で宿を取ろう」
「それは名案ですね」
「俺もゆっくりしたいしな」
「同感です」
温泉街で一番立派な建物に入る。たぶんここが一番グレードが高い。
「いらっしゃいませ、お客様」
「ローガンの使いの者だ。先に宿を取っておいて欲しいと言われてな」
「左様でございますか。滞在は何日ほどですか?」
「一週間を予定してる。これは前金だ」
そういってフロントに金貨二枚置いた。
「そんなお金何処から……」
「手持ちが無いと不安なタイプなんだよ、俺は」
「お客様?」
「いや、前金を貰っていたのを見て無かったらしいんだ」
「ああ、なるほど」
宿帳に四人分の名前を書く。ウルルスは偽名にした。ティアにはコル姓を追加しておいた
「ご記入、ありがとうございます」
「ティア・コルですか、悪くない響きです……」
ティアは一人、悦に入っている。
「では係りの者がご案内しますね」
チリリンと鈴のを鳴らすと奥から女性が出てきた。
「お荷物をお持ちします」
「お願いします」
ティアがかばんを女性に預ける。高価なモノは入っていない服だけだ。女性でも楽々持てるはずだ。
「こちらでございます」
「はい」
女性の後を着いていく。階段をどんどん上っていく。最上階の一室に案内された。これは、ホントに高そうだな、とウルルスは慄く。
「どうぞ、ごゆるりと」
「凄い部屋です……」
三室ぶち抜きの広い部屋だった。室内風呂まである。ポンプでくみ上げているのか、かけ流しだ。
「贅沢な部屋だなぁ」
「御用の際はベルをお鳴らし下さい、では」
そう言って女性はかばんを置いて部屋を出て行った。
「ご飯はどこで食べるんでしょう?」
「ここでじゃないか?」
テーブルセットまである。シェフがここで作ると言っても、もう驚かないレベルだ。
「ふふふ、人生の勝ち組ですぅ~」
「いや、ティアの人生はどちらかと云えば負け組だから」
「今はどうでもいいです、そんな事」
手を引かれベットに誘われる。ふかふかで思わず睡魔に襲われそうだ。
「お邪魔虫の居ないうちにすることを、してしまいましょう!」
「ホントにティアは肉食だなぁ」
「お嫌いですか?」
「いや。実は秘湯からずっと我慢してたんだ」
「我慢は体に良くないです……」
ティアにキスしてから、
「俺もそう思うよ」
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