第40話 懺悔
「ただいま……」
「おかえりなさい。ご主人様、どうかしましたか?」
「ちょっと色々あってな……」
ソファーに座り込むと、足の間にティアが座ってくる。思わず抱きしめたい気持ちをグッと抑える。
たぶんベス達は逃げたと思われる。情報が古かったからだ。置き手紙があったが、この位置からは見えない。たぶん言い訳なので、後で良いだろう。
「自分らしくない事をするもんじゃないな……」
「仕事で失敗でもしましたか?」
「失敗じゃないんだが、信条の一つを破ったと思ってな」
「はぁ、それで珍しく落ち込んでいたんですか……」
今日有った事をポツポツと話す。
「運の無い人も居たもんですね……」
「そんな感想かよ……」
「じゃあ、間が悪い人?」
「あんまり変わらないよ……」
娼館皆殺しにティアがあまり反応しない。それほど冷酷な人間だと思われていたのだろうか? けっこう落ち込む。
「メルケルを殺すと決めた時点で、それなりに被害は想定してたんじゃないですか?」
「まあ、それなりには……」
「名前を覚えなきゃいけないっていうのはご主人様のただの趣味です!」
頭に岩を落とされた気分だ。辛辣にもほどがある……。
「その言葉で目が覚める前に永眠しそうだよ……」
「人殺しは悪い事に決まってます。私達はその悪い事でご飯を食べてます。違いますか?」
「その通りです。反論も出来ません」
「なら割り切るしか無いじゃないですか……。悪い事は悪い事だと」
「はぁ……。ティアに出会ってなかったら、俺はどこかで自己矛盾で死んでいた気がするよ」
「私は暗殺者の妻になる身ですから!」
男性よりも女性の方が強いとは思っていたが、これほどまでとは思わなかった。それもまだ成人にも満たない年齢で生き方まで決めてしまうとは、
「アダマンタイト級って話もあながち嘘じゃなさそうだ……」
「? なんの話です?」
「ん? 殺した分ティアが産めばいいって話、かな?」
「無理ですよ、ご主人様が殺した数なんて産めません……」
「そうか、物理的に無理か……」
「あぁ、他の人に頼むって言ったら。ご主人様の自慢の息子は物理的に切り離しますから」
「想像するだけで怖すぎる……」
息子と泣き別れになる訳にはいかない。これからも浮気は止そう。勿論不倫もだ。
「なにか、飲みます?」
「そうだな、憂さ晴らしに少しいい酒でも飲むか」
「取ってきます!」
ティアに酒の良し悪しが分かるのだろうか? 少し不安になりながら、ベスの置き手紙をみる。
(探さないで下さい)
家出少女かよ、と思うような一文しか書いていない。たぶん急いでいたんだろう。筆記がかなり乱れている。
「そう言われると意地でも探したくなるな」
「持ってきました!」
「それ、仕事一回分の酒だぞ……」
「ちょっと、そこに正座して下さい」
「はい……。すいません」
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