第39話 虐殺と拷問
不運な客を含めて、娼館の人物は全て殺した。中には殺すのが躊躇われる容姿の女性も居たが、それはそれ、これはこれ、仕事に例外は無い。ティアに年齢が近い子もいたが、この子もいずれメルケルを継承するのだろう。自分の殺し方は一瞬で終わる。それだけが全員の救いだろう。
「ま、これで全員かな?」
集中して音を聞いても自分以外の心音は聞こえない。
「これで復讐する気概があるなら、是非とも暗殺者ギルドにスカウトしたいねところだが……」
メルケルは元々暗殺者ギルド所属だったか、手応えが無さ過ぎて忘れていた。とりあえずギルド長に文句を言いに行こう。後お仕置きも、
合言葉で隠し扉を抜けると、ギルド長のカリアは既に正座だった。何時間そのままだっかは知らないが、それで収まるような出来事ではない。
「正座とはいい心がけだな……」
「古い情報を渡してしまい。面目ないです」
「他の二人はどうした?」
「怒りは全て私が引き受けます……」
「ほう、俺が何人殺したか分かってて、言っているんだよな?」
「もしかして、皆殺しですか……?」
「皆殺しだな……。単なる虐殺と言っていいだろう。本当に、カリアはくじ運がないな」
「自覚してます……」
「じゃあ、アリアとミリアに石持って来させろ。正座だけなんて生ぬるいからな」
「ご、ご慈悲を……」
「そんなもの母親の胎内に忘れてきた」
二人で正座の上に乗せる拷問用の石が運ばれてきた。用意がいい事だ。
「言っておくど、カリアが終わったらお前らの番だからな」
「「ご慈悲を……」」
さっきも言ったがそんなモノは無い。古い情報のせいで関係ない奴まで殺す事になった。そのこと自体に後悔はないが、もっとうまくやれる方法があったはずだ。これ以上同じ事が続くのも困る。暗殺者にとって情報は生命線だ。これでもし俺が殺されていたら、誰がティアを養うと思っているのだろう。
「一枚目を乗せろ」
「「はい」」
「ひぐっ!」
「なに、二枚で止めてやる。優しいだろ?」
カリアは目に涙を溜めたまま頷く。文句を言ったらその分石が増える事を理解している様だ。
「声を上げないのか、少しつまらんな……。アリア、ミリア。一枚追加だ」
カリアはブンブンと首を振っている。これ以上は無理というサインだろう。二枚目で止めておく。
「思ったより、堪え性が無いな。言いたい事があるなら言ってみろ」
「反省しています。許してください……」
「ありきたりでつまらんが、まあ良いだろう。ミリア、正座しろ」
「なんで僕が……」
「カリア、アリア。ミリアは三枚がいいそうだ。乗せろ」
カリアはフラフラしながら、アリアは次が自分の番だと思うと力が入らなかったのだろう、仕方ないので自分で石を運ぶ。
「これくらい、持ち上がるだろ。ほれ」
勢い良くミリアの足に石を乗せる。
「ぎっ!」
「ほら、追加するぞ」
二枚、三枚と次々に石を乗せる。痛みでミリアの意識が飛ぼうとすると、身体を揺すって痛みで起こす。ミリアは言葉を発する余裕すらなかったようだ。
「このままでも面白いんだが、アリア用の石が無いな……」
「すみませんでした! 反省してます!」
「反省は誰にでも出来る。ちゃんと体に教え込まないと……。まあ、あとはカリアの独断に任せるよ」
カリアは嗜虐的な笑みを作るとミリアに乗せていた石をどかし始める。
「私とミリアだけなんておかしいですよね……」
「……。その通りだね、何事も分かち合わないと……」
カリアとミリア、二人の暗い笑みを見届ける。アリアの悲鳴が聞こえた気がするが関係ないことだと、家路に着いた。
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