第38話 娼館
娼館と言うと男性ばかり通うようなイメージがあるが、勿論女性用の娼館も存在する。男娼は用心棒を兼ねていることも多い。まあ、男性を買う男性も中には居るのだが……。
ティアを説得するのに大分時間を割いた。娼館で絶対に娼婦を買わないの事を条件で何とか許してもらった。悲しいがすでに尻に敷かれてる自覚はある。娼館で女を買わないとなると、男娼を用意されそうで怖い。
「いらっしゃいませ。当店は初めてのお客様ですよね?」
「ああ、知り合いにコレを貰ったんでね」
そう言ってベスから貰った木片を見せる。
「かしこまりました。極上の娼婦を用意させていただきます」
「頼んだよ、ところでメルケルさんは居るかな? 必ず声を掛ける様に言われているんだ」
「申し訳ございません。今は居ないのです。遊んでいる内に帰ってくると思いますよ?」
「そうかい。じゃあ待たせてもらおうかな……」
「遊ばないのですか?」
「挨拶したら、遊ばせてもらうよ。酒はあるかい?」
「エール、ワイン、ウイスキー、ブランデー等がありますが?」
「じゃあ、ワインを貰おうかな……」
「かしこまりました。少々お待ちください」
受付のこの子も殺さないといけないのか……。仕事なので蒸留酒は飲まない。ホントに酒でも飲まないとやってられない仕事だ。座り心地の良いソファーで酒を待つ。目をつぶり音に集中するとお楽しみの最中の連中が三組いるようだ。
「お待たせしました」
「ありがとうよ……。結構、繁盛してるみたいだな」
「用意している娼婦が良いので」
「それは楽しみだ……」
脳裏に目が笑っていないティアの笑顔が掠める。とてもじゃないが、遊ぶ気になれない。
「お客様は遊び慣れているんですね……」
「……。そう見えるかい?」
「全然、ソワソワしていらしゃらないので……」
「まあ、女には不自由してないんだが、風の噂でね」
「そうですか、くつろいでお待ちください。メルケル様もすぐに帰ってくるでしょう」
「そうさせてもらうよ」
ワインに毒でも入っていない事を祈ろう。まあ、大抵の毒に耐性があるんだが、
「いいワインだ。きっと保存状態がいいんだろうな」
「ありがとうございます。娼婦もご期待下さい」
「あぁ」
これから殺すのに……、か。この仕事に美醜や立場に関係ないか、依頼があれば誰でも殺す。それが信条だ。
「おかえりなさいませ、メルケル様」
スッと視線をメルケルと呼ばれた人物に向ける。ギルド長の似顔絵と全く違った。これはどお云う事だ? 代替わりでもしたって言うのか?
「メルケル様、お客様です」
「初めて見る顔だ、誰の紹介かな?」
ま、殺してから考えるか。場所は合っているわけだし、ベスが偽の情報を流したとも思えない。ギルド長はとりあえず正座で説教だな。
「前のメルケルさんは?」
「ああ、そちらと親交があったのですね。最近代替わりしまして」
やっぱり代替わりしてるじゃないか……。これはもうギルド長は拷問決定だな。
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