第27話 奴隷の在り方

 ターゲットはこの間のブッキングの相手の商売敵の娘だった。奴隷商売は儲かるのか豪華な建物だ。建物は高い塀で囲まれていたが、かえって好都合だ。これが五メートルなら話は別だが、身体能力強化魔法で易々と侵入できた。

「自室の位置までご丁寧に書くってどんな令嬢だよ」

 死ぬのが怖くないのだろうか? ひょっとしたら罠かもしれないな、と思いながら屋敷を歩く。地図の部屋に着くと静かに扉を開く。

「お待ちしておりました、暗殺者さん」

「…………」

「少しおしゃべりをしませんか? 私にとっては最後の会話なのです、それ位の慈悲は持っておりますでしょ?」

「まあ、アンタみたいのを相手をするのは初めてじゃない。話そうじゃないか」

「お茶はありませんが、丁重におもてなし致しますわ」

 後ろ手でゆっくり扉を閉める。

「立ち話もなんですからお掛けになって下さい」

「いや、このままでいい」

「そうですか、では早速本題に入りましょうか……。暗殺者さん、奴隷とはなんでしょう?」

「人の家畜だろ、財産とも呼べる」

「そうですね。とても無慈悲なお答えで、それが正解だと私も思います。奴隷商だった父もそれはもう家畜のような扱いでした」

「アンタは家業を継いだのか?」

「他に継ぐ人間が居なかったもので、奴隷は全て私の物です」

「ふ~ん、でアンタは疑問を持ってしまった、ってとこか?」

「奴隷は何故奴隷なのか、おかしいじゃありませんか、同じ人なのに」

「別におかしく無いだろ、奴隷は運が無かった。アンタは運を持っていた。それだけの話だ」

「生まれた家が奴隷商だからって継ぐ必要なんてないはずです!」

「はぁ、自分と同じ年頃の奴隷とでも友達になったのか? それとも、自己投影して同情でもしたのか?」

「両方ですよ! 私は今の自分の立場が許せない!」

「大声出すなよ、死人が増えるだろ」

「教会の牧師様にも聞きました。何故奴隷はいるのかと」

「前世での行いが悪かった、とでも言いそうだなぁ」

「全く同じ事を牧師様は言われました。じゃあ、奴隷たちに、この世に救いはあるのですか?」

「さあな、いい主人に買われたら幸運だろうな」

「人を売買すること事態そもそもおかしいとは思わないんですか!」

「思うけれど、それが制度だ。王が決めた、な」

「……、王を殺せば制度が変わる?」

「変わらんよ、前国王を殺しても制度は変わらなかったしな」

「なら、奴隷はどうすれば救われるのですか……」

「さてね、この世から奴隷商がいなくなれば、かな。ちがうか、奴隷と云う概念がこの世から無くなった時だな」

「その日は来ますか?」

「知らんよ、俺はただの暗殺者だ。人を殺すしか能のない、な」

「あなたは変わっています。ここまで聞いた暗殺者達は義憤に燃え、他の奴隷商を殺して回っていたのに……」

「義憤に燃えるほど、俺は立派な志を持っていないんでね」

「……、最後に貧乏くじを引いたみたいです」

「なに、苦しみは一瞬だ」

 令嬢の胸を撃ち抜き、その場を去る。

「やれやれ、人の痛いとこ突きやがって。ティアに会わせる顔がないよ、全く……」

 空を見上げても、月も星さえ見えなかった。




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