第26話 自殺幇助
今日はオムレツはを人数分用意出来た。カードを配る必要がないから、平和なモノだ。
「やはり、ご主人様のオムレツは最高です」
「そうね、なんでこんなに美味しいのかしら?」
「塩コショウ加減が絶妙ですね」
自分の料理が褒められるのはやっぱり嬉しい。
「オムレツ用のフライパンを使っているか、どうかだろ」
「そういえばこの前、凄い怒られました……」
その時の事を思い出してティアはブルっと身を震わせた。本気で怒ったので覚えているんだろう。オムレツ用のフライパンで燻製肉を焼こうとして正座で二時間ばかり説教した。
「あたり前だ。命があっただけマシだと思え」
「そこまでですか……」
コツコツと窓が叩かれる。ギルドの連絡用の鳩だ。
「最近多いですね」
「質が落ちてるってレベルなのかしら……」
「暗殺者の数が減っている、とかでしょうか?」
鳩から手紙を取り、手紙に目を通す。
「はぁ、コレね……」
「どうしたんですか?」
手紙をひらひらさせて、ウルルスは答える。
「自殺のお手伝いだよ」
「「「は?」」」
「一定数あるんだよ、自分では死ぬ勇気がないから殺してくれって依頼がな」
「お金を積んでまで死にたいんでしょうか?」
「いるんだよ、金持ちの令嬢あたりが特に」
暗殺の中でも比較的楽な仕事だが、気が滅入る。
「なんで死にたいかは人それぞれなんだが、若くて裕福な奴程死にたがるな」
「理解できません」
「しなくていいと思うぞ? 寸前でやっぱり死にたくないって言い出す子もいるしな。まあ、殺すけど」
「極悪ですね……」
「そうか? 依頼を受けて死にたくないって言ったから殺さなかったなんて、暗殺者失格だろ?」
「それは、そうですが……」
「その依頼見なかった事に……」
「出来ないよ。ギルド長に掛け合ってみるけど、依頼金受け取っていたらアウトだ」
「世の中には色んな人がいるんですね……」
「まあ、とりあえずギルドに顔を出してくる」
「いってらっしゃいませ、ご主人様」
合言葉でギルド長のもとにやってくると珍しく渋い顔をしていた。
「ギルド長が渋い顔って事は依頼金はもらっちまったか?」
「ええ、何の疑いもせずに……」
「元気出せよ、アリア」
「ここではギルド長と呼んで下さい……」
「暗殺者ギルドの質が落ちてるってフェイが言ってたぞ」
「これ以上の追い打ちは止めて下さい……」
「で、俺は誰を殺せばいいんだ?」
「こちらです」
似顔絵を見せてくる。詳細に部屋の位置の書かれた地図まである。
「ふ~ん、美人じゃないか。なんで死にたいか全く分からんな」
「私も、これで婚約者が親の仇とかだったら結婚が嫌でとか、納得もするんですが」
「理由が分からない、と?」
「はい、及ばずながら……」
「……、死にたい奴の事を考える無駄な思考を止める事だな」
「そうですね、ここは暗殺者ギルドなのですから……」
「ホントに大丈夫か?」
「正直、この手の依頼は苦手です」
「まあ、死にたがりに気持ちを割くな、心の無駄使いだ」
「ウルルスは自分の在り方に疑問を持ったことは?」
「残念ながら一度も無い」
「…………、強いですね」
「心の在り方なんてその都度変わる、固執する方がおかしい、と俺は思ってるよ」
「……、依頼の完遂をお願いします」
「任されたよ」
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