第25話 新しい日課
ニワトリが鳴く前にベットで目を覚ます。軽い二日酔いの頭で井戸に向かう。ここ最近の日課になりつある。
「おはようございます。師匠」
「朝から元気だな、ローガンは……」
素振りで汗だくのローガンの脇を抜け、古井戸で水を一杯飲む。体に染み渡る冷たい水が美味い。
「師匠、お手合わせ願います!」
「避けるだけでいいんだよな?」
「はい!」
ローガンと対峙する。ランドルフ古流剣術の動きは全部頭に入っている。
「行きます!」
一の太刀、二の太刀、三の太刀を避けた所で反撃する。今日まで何も成長が見られない。
「ぐふっ」
「速さは及第点だが、身体能力強化魔法を何故使わない?」
「……、返って遅くなるんです」
「まあ、だろうな……。身体能力強化魔法を使いこなせてない証拠だ……」
「ですが、常時身体能力魔法を使えるほど魔力量が無いんです」
「常に使えって言って無いが?」
「へ?」
「接触の瞬間、離脱、次の攻撃の瞬間だけ使えばいい」
「…………」
「やってみようか?」
「……、はい」
ローガンから剣を受け取り。ガルシアの攻撃を明確に思い出す。
「よく見てろ、見えるかどうかは知らんがな」
一の太刀、全ての防御を切り伏せる最速の一撃。二の太刀は一の太刀で斬り伏せられなかった、追撃と周りにへの威嚇、三の太刀は二の太刀より広範囲の威嚇、そして、一の太刀へ戻る準備動作でもある。
「ローガンも分かっているとは思うが、ランドルフ古流剣術の神髄はいかに隙なく一の太刀の前に戻れるかに集約されている」
「……、はい」
「どこで身体能力強化魔法を使うのかは、慣れるしかない」
「はい、分かりました!」
「……、ローガンは真面目過ぎるな、まあ美徳だがな」
「美徳ですか?」
「糞真面目とも言えるがな。嫌いじゃないよ、俺は」
ローガンに着替える様に言うとウルルスは水を浴びる事にする。まだ、パン屋が開くまで時間がある。頭から水を被る。ようやく頭がスッキリした。
「はぁ、弟子ねぇ……」
ガルシアの練習風景をよく見ていたので、ランドルフ古流剣術の動きは全て覚えている。この国には三つの流派があるが、実践的なモノはランドルフ古流剣術だけだ。
「暗殺者には向かん向かんな……」
ランドルフ古流剣術は表の剣術だ。闇に堕としても得は無い。ガルシアもそれは望んでいないだろう。
「…………」
「置いて行こうとしてませんでしたか?」
「ん? していたが?」
「し~しょ~う~」
恨みがましい声で詰め寄ってくる。
「着替えてくる……」
「私は待ってます」
「はいはい」
部屋に戻るとベットでティアが寝ていた。来たのは、たぶん無意識なんだろう。枕を抱いて幸せそうな寝顔だ。
ローガンが待っているので手早く着替える。待たせすぎると折角着替えたのに素振りを始める可能性がある。
「待たせたな」
「いえ」
「身体能力魔法を使う練習だ、ここからパン屋までダッシュだ」
「負けません」
「いや、練習だから」
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