第22話 鷹案件
お仕置きにティアを快楽でドロドロに溶かした後、水を浴びようと外に出ると鷹が近くの木にとまっていた。
「マジか、明日にしてくれないかな~」
本当にハチミツの後に辛い物はキツイ。でも、仕事は仕事。しかも鷹案件である。自分が危険な可能性もある。水を浴びるの止めて燻製肉を取りに食物貯蔵庫へ向かう。燻製肉を一塊持ち出すと鷹が肩にとまって来た。
「え? 全部じゃないよね?」
一泣きされ渋々燻製肉を下ろすと鷹は足を差し出してきた。
「……。暗殺者からの護衛任務?」
珍しい。護衛に暗殺者を使うなんて、しかも鷹案件である。詳しい話をギルド長に聞かなければならない。
ティアはしばらく使い物にならない。置き手紙を書いておく。
「今生の別れにならないといいんだが……」
「連れが後からくる、いつものやつを頼む」
「……。は~い、奥の個室にどうぞ」
目配せで分かったが、これは一筋縄ではいかない案件のようだ。
置かれたエールを飲み干し、隠し扉からギルド長のもとへ向かう。
「やあ、ウルルス」
「遅かったじゃないか」
ギルド長のカリアとミリアが揃っている。かなり珍しい。
「ギルド長二人も揃ってどういう事だ?」
「ダブルブッキングだよウルルス」
「こちらのミスだ。すまない」
「話が見えない、どういうことだ?」
二人の話ではある商人の暗殺依頼がきた。そこまではいい。しかし、その依頼者にも暗殺依頼が来たらしい。
「どっちも殺せば良くないか?」
「それじゃ信用に傷がつく。それに依頼金が貰えない」
「詰みだな。で、どっちの依頼を断るんだ?」
「それで、君の出番だ」
「依頼主を守ってほしい」
「もう、仕事は発注済みって事か……」
三人の暗殺者が自分の仕事をする。これはややこしい。
「報酬は弾んでもらうぞ」
「こちらのミスだ。存分に上乗せさせてもらうよ」
「依頼主を守れるのは君以外にいない、頼んだよ」
ため息を着くと依頼主の素性と顔を確認する。
「相手の暗殺者の素性は聞かないんだね?」
「聞いてどうする、これから死ぬ奴だぞ?」
ウルルスのモットーに殺した人物の名前を忘れない、というものが有ったが、同業者はその範疇にない。
「まあ、先手必勝出来れば一番いいんだがな」
「聞いて損は無いと思うよ、相手は最凶だからね」
「あいつかよ……。爆弾魔ペイン・ソール」
「ご明察」
「周りの被害を考えない最凶の暗殺者」
ウルルスは深々とため息をついて、
「酒場で一杯奢ってもらう」
「エールかい?」
「それとも、蒸留酒?」
ウルルスは少し考えて、
「蒸留酒で一番良いのを頼む」
ギルド長達は顔を見合わせて、
「「一番高いのを用意する」」
手をひらひらさせて来た道を戻る。
「アリア~、蒸留酒の一番高いの頼む」
「……。は~い。受けるんだね。ウルルス」
「爆弾魔が居なくなるのはお互い助かるだろ?」
「まあね~」
グラスでなみなみと満たされた蒸留酒が置かれる。三十年物のウイスキーだった。香りからして美味いと分かる。お金に換算する気にもならない。いつもはチビチビ飲んでいるが、
「いくらでも飲んでいいって、さ」
「一杯でいいよ。この酒場が傾いちまう」
「では、ごゆっくり~」
グラスのウイスキーを飲みながら、ティアにも飲ませたいな、そんな事を思った。
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