第11話 告白

「ご主人様、お話があります!」


 勢いよく玄関のドアを開けてるなりそう言った。


「うお、ビックリした。何だ、ティア?」


 大きく深呼吸して心を整える。人生で一番緊張しているかも知れない。今言わなければ、奴隷と云う身分に縛られて一生言えないかもしれない。


「私は……、私はご主人様が好きです。……異性として」


 突然の告白に。ウルルスは誠実に答えた。


「ありがとう、ティア。俺もティアが大好きだよ。もちろん、異性としてな」


 ウルルスは照れくさいのか頬を掻いている。ウルルスの言葉にティアの瞳は大きく開かれる。


「本当、ですか?」

「こんなことで嘘がつけるほど器用じゃないよ」

「酔って、ないですよね?」

「まだ飲んでないな」

「……私たちは両想い、なんですか?」

「そうだよ」


 その言葉に、ティアは思わずペタリと座り込んでしまう。


「大丈夫か?」

「……力が抜けて、立てますせん」


 幸福を噛みしめるでもなく、安堵で力が入らない。初恋が実ることはない、そう聞いていた。自分はこれが初恋だと思う。正直、実ってしまったことに驚いている。


「一世一代告白の後は、そうなるんだな」


 近づいて目線を合わせるためにしゃがんだウルルスの顔が見れない。


「なんですか、笑ったら怒りますよ?」

「笑うわけないだろ」


 そう言って抱きしめてきた。驚きで心臓が口から飛び出すかと思った。


「俺も結構、我慢していたからな……」

「我慢してたんですか? そんな素振り一度も」

「ああ、それは酒で抑えてたんだよ」

「それで、昼間からお酒を?」


 抱きしめる力を強くする。折れてしまいそうな体だなとウルルスは思った。


「ティアが、男性を嫌悪してたのは分かっていたからな、ちょうどいい距離を保つのにダメ人間を演じていたのさ」

「いや、あれは素でしょ?」


 飽きれたような物言いにウルルスは反論する。


「……、酒は好きだが昼間から飲むことなんてほとんどなかったんだよ」

「これからは昼間から飲まないって誓えますか?」

「誓える。これからは我慢しなくて済むからな」


 そう言うと抱擁を解いて肩に手を置く。


「いい加減、こっちを向け」

「……無理です、拒否します」


 じれったいなと思ったウルルスはティアの顎を掴んでこっちを向かせる。


「キスできないだろ」

「ま、待って下さい、心のじ……」


 強引にでも優しく唇を合わせる。


「ん……」「……」


 しばらく動かずいると息が出来なくなってティアが離れた。


「……。ムードが無いです、やり直しを要求します」

「……。ティア、愛してる」

「私もです」


 今度は目を合わせから、ゆっくりとキスをした。


「えへへ、これでファーストキスもセカンドキスもご主人様が相手です」

「……、女の子が生まれると大抵の父親にそれは奪われるんだがな」

「ノーカウントです、そんなの」

「まあ、そうなるよな」


 笑い合って立ち上がる。


「朝食が冷めてしまったな……」

「冷めても美味しいですよ、ご主人様のオムレツは」

「そう言ってもらえて、嬉しいよ」

 

 

 

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