第15話
やっと週末に入ったというのに、あっという間に終わってしまった。
部活もしていないのに疲れきっていて、何もする気にならないまま終わった。
ちなみに遥輝や幸人は、早速練習試合で丸々一日部活漬けだったらしい。
今だと考えられないが、しっかり自分が部活をしていた頃は、練習試合で土日ともに一日無いなんて普通にあった。
その事を考えると、あまりにも怠惰になりすぎているとも言えるが。
そして今日からは、放課後に凛ちゃんと勉強してから帰ることになる。
妹に負担をかけることになるから、その辺りは申し訳ないな〜とか先週まで思っていた。
しかし、週末に凛ちゃんと遊びに行くことを理由に大量の買い物を押し付けられて大変だったので、そんな思いはどこかへ行った。
というか、妹も凛ちゃん慣れない新環境なのに、よくすぐ遊びに行く元気があるなと思う。
俺なんて中学校入学して最初の週末は、高熱出して寝込んだというのに。
「来月から学校行事が増えるから、定期の範囲を確保するためにも授業のペース早くなるからな!」
そして学校の勉強の内容も難しく、同時に早くなってきた。
凛ちゃんに勉強を教えることもいいけど、自分もちゃんとしないと本当に成績が下降してしまう。
「あー、全く授業内容分かんね」
「遥輝、本気でそこそこやっておかないと。欠点とると、部活出来なくなるんじゃない?」
「そうなんだよなぁ……」
「俺も結構ヤバい。一年の頃は平均くらいはいけたけど、二年になってから内容が明らかにキツイ」
部活をバリバリしている二人からすれば、帰ってから『さぁ、勉強だ!』とはならない事はすごくよく分かる。
かといって、やらないと部活自体できなくなる。
「斗真はいつも余裕そうだよなぁ」
「そりゃ、お前らと違って部活してないからこれくらいはしないと流石にな……」
「何が出そうとか教えてくれ」
「勉強してみて、やっておいた方がより良さそうなやつとかは、教えられるようなら……ってお前ら彼女に教えてもらえよ!」
「だってあいつ文系クラスだし……」
「……そんなに頭良くない」
一緒に勉強しているという話は一体何だったのか。
何となく分かってきたけど、勉強してるとか言いながら教材は広げてただいちゃついてるだけのような気がしてきた。というか、多分そうだな。
ちくしょう、やっぱり楽しそうだなこいつら。
「こういう時に、勉強出来るやつが彼女だったら……って思うよな」
「そうか? 逆に俺らがアホな事に対して、冷められそうじゃね?」
「斗真はどう思う?」
「わざとか? わざと分からない俺に振っているのか??」
彼女がいない俺にどんな答えを求めているのか。
いないやつなりに考える意見でも欲しいのか。
そんなわけないと思うのだが。
「このクラスで勉強が出来る女子と言えば?」
そんな俺の悲しみのこもった問い詰めに、二人は反応することなく、次の話を始めた。
「結花じゃない? 何かよくテスト返却の時によく出来てたやつの中に呼ばれてね?」
「そうだな。見た目の軽さに合わず、優秀なんだよな、あいつ」
確かに二人の言う通りで、委員長は一年の頃から優秀だった。
ここ最近から、まともに絡みだしたこともあって本格的にどれくらいの成績かは知らないけども。
「委員長に勉強教えてーって言えばよくない? 委員長に教えてもらったら、絶対に忘れないし」
「その事は触れないでくれ……」
「いやいや、散々俺の事だっていじるじゃん!」
ちょっと悪意があった事は認めるが、そんなに落ち込まなくても。
……付き合ってないとかはいじられてもいいのに、その他の恋路は触れるのタブーか。難しいところだ。
「君たち! 私の事を呼んだかね!?」
そんな話をしていると、委員長が俺たちのところにやってきた。
「いや、結花いっつもテストの点が良いから、どんな感じで勉強してんのかなって」
「ほう! ついに遥輝もやる気を出したってことかい!? 彼女にバカはヤダってでも言われた?」
「そ、そんなこと言われんわっ!!」
あ、言われてるやつだこれ。
何だかんだ今の彼女の事が可愛くて、相当影響されてんだな。
「斗真が頭いいんじゃなかった?」
「うーん。思ったより、授業ペース早くて正直キツイ。遥輝も幸人もやる気出してるし、サポートしたいけど、自分が出来てなきゃ何も出来んからね」
「へぇ、じゃあ斗真もボチボチヤバいの?」
「うん」
「ほぉー。助けてほしいかぁ?」
相変わらず楽しそうに笑いながら、敢えて机に座って悪そうな雰囲気を出す委員長。
見た目とファションがいい感じだから、どんな事をしても雰囲気が出る。
「助けてほしいー」
素直に委員長の勉強事情、すごく気になる。
成績優秀な人の勉強には、色んな要素があって聞けるならどんな人のも聞いてみたい。
「あはは! そうかそうか!!」
「結花、めっちゃ笑ってるやん」
「楽しそうだなー。何かこの二人、独特な空気感があるくね?」
「いやほんとそれ」
いつの間にか若干、二人が俺と委員長から距離を取っている。
「いいよ! 分からない事とかあったら、遠慮なく聞きな! 優しく教えてやるぞ?」
「わー、ありがとーございまーす」
部活で忙しい二人の勉強事情をどうにかしないとという話だったのに、結局俺と委員長との勉強事情が進展しただけになってしまった。
ただこの機会を活かして、なるだけ早く理解することによって、二人にフォローはできそうな目処は立ったので、悪い話ではなかったけども。
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