第165話 忘れたころに思い出の
リスト商会で大神殿完成予想図を見せてもらい、大神殿の形は外装が黒御影石で、6本の尖塔型鐘楼のある形にすることに決めた。
「これで具体的な設計に入ります」
「後は
「お任せください」
「ダークンさん?」
「なんだ、トルシェ?」
「工事には大きな石材も使うようだから、作業用にゴーレムを何体か作りましょうか?」
「ほう、その手があったか! 重量物の運搬はそれだけで大変な仕事になるから大助かりになるんじゃないか?」
「でしょ。ゴーレムくらいは何体作っても大丈夫だけど、どうします?」
「リスト、トルシェがこういっているが、ゴーレム何体欲しい?」
「ゴーレム何体と言われましても、私でははかりかねますが、とりあえず2体もあれば」
「たったそれだけでいいのか? トルシェが創るゴーレムはそうとう頭のいいゴーレムのはずだから、そこらの建築作業員並みの細々した仕事でもこなせると思うぞ。
そうだろ、トルシェ?」
「それは任せてください」
「だそうだ。とりあえず人間くらいの大きさのゴーレムを20体、3メートルくらいの重量物専門のゴーレムを2体くらい作っておけばいいんじゃないか?」
「それでは、そのようにお願いします」
リストも建築屋じゃないんだから詳しくは分からないだろう。少し戸惑った顔をしているが、そのうち自分たちでゴーレムを使いこなしていくだろう。
「工事でもし余ったら、お前のところで使ってもいいんだからな」
ついでにフォローしておこう。
「トルシェ、そういうことだから」
「
リスト会長、帰るときに店の前にゴーレムは並べとくから後は勝手に使って。口で命令すれば大抵のことは理解してちゃんと仕事するから」
「かしこまりました」
「それと建設資金に問題が出るようなら今のうちにトルシェに言ってくれよな。俺たちは、これからテルミナにしばらく帰っているつもりだから」
「資金の方でわが主を煩わすことがあっては信者の名折れ。心配ご無用に願います」
「すまんな。それじゃあここでの用も済んだし、俺たちはそろそろお暇しよう。作業の方はリストの方で粛々と進めていってくれ」
「お任せください」
ということで、俺たちの具体的作業は終わってしまった。建設費用も今のところ問題はないようだし放っておいても良さそうだ。
出されていたお茶を一気に飲み干して俺たちはリスト商会を後にした。
「さーて、そろそろ、拠点に戻るか」
「その前に、ゴーレム。大きいのが2体に小さいのが20体。
出でよ、ゴーレムたち!」
この前のリンガレングを俺がキューブから出した時のことを覚えていたようだ。
トルシェが、何だかポーズをとって右手を一振りしたら、ゴーレムが形づくられていった。ゴーレムの体が砂になるところを逆再生したような塩梅で、徐々に体が創られて行く。そして、10秒ほどで全てのゴーレムができ上った。そのゴーレムたちがリスト商会の玄関前で整列している。王都の連中もスケルトンは見慣れているかもしれないが、過剰演出の中でのゴーレムの登場に道行く連中は一様にギョッとしたような顔をして足早に去っていった。玄関口で俺たちを見送っていたリストたちも見かねて、ゴーレムたちを店の中に入れていた。
「ゴーレムも作ってやったし、これでどんどん作業が進むな。王都での仕事は本格的になくなってしまった」
「早く拠点に帰って、ダークンさんの言う田園を見てみましょうよ」
「その前にトルシェ、2号に連絡して、陸戦隊員が余ったら大神殿の建設現場の警備をするように伝えておいてくれ」
「はいはーい。……、伝えました」
「2号は何て言ってた?」
「今の新人の訓練が終われば、毎日10人は出せるって」
「十分だな。それじゃあ、西門まで俺たちの
「はーい」「はい」
俺たちはアズランを先頭に、通りに面した酒屋や食料品を扱っている店で燃料を補給しながら西門に向かっていった。
一通りの買い物が終わり、のんびり歩いていたら西門が見えてきた。
その時、急に何かが横合いから俺の頭上を通り越して俺のすぐ脇に落っこちてきた。
前を歩いていたアズランは既に『断罪の意思』を抜き放って身構えている。フェアはアズランの頭のすこし上で待機中だ。
落っこちてきたのは、体の細長い、表情の欠落した不気味な男だった。着ている服は濃い灰色のローブ。中にズボンを履いている。
「なんだ、お前?」
「……」
俺の問いには答えずその男は右手を突き出してきた。
握ったこぶしの人差し指と中指の間に太めの針のようなものを仕込んでいる。
「ナンバーワン!」
アズランの声が聞こえてきた。ナンバーワンというのは『赤き左手』を叩き潰した時出張中だったリーダーのことだったかな? やっと俺たちに絡んでくれるバカが現れて俺は嬉しいぞ。この出会いに感謝だな。じっくり楽しませていただくとしよう。
男の突き出してきた針は簡単に躱したのだが、不覚にも針の先端から黒い液が飛び散り俺の大事な余所行きの左肩口から胸元にかかってしまった。みるみる繊維が溶けていき俺の柔肌が露わになった。
そこで男がニヤリと嗤った。
こいつは、変態男なのか?
「ダークンさん、上着の首筋も溶け始めてる」
後ろからトルシェの声。男は俺の頭上を飛び越えていくときに、黒い液を吹きかけていったか、液の付いた針を俺の首元に投げつけていったのだろう。チクりともしなかったから気づけなかった。
この男、技能は高そうだが、相手が悪かったな。おそらく、猛毒『暗黒の涙』か何かを使ったのだろうが、俺たちにはどんな毒も効かんのだよ。
「お前が『赤き左手』のリーダー、いや元リーダー、いやいや、一人でも生き残っていたら現リーダー。どっちでもいいが、素性は分かった。遊んでやるからどこからでもかかってこい。
おっと、今さら遅いが、それでも、ダークサンダー装着!」
ダークサンダーを身にまっとっていないと、乙女の柔肌が周囲に晒されてしまう。
ダークサンダー装着に際しては、エクスキューショナーとリフレクター、それにスティンガーを装備している。コロちゃんも普段着のベルトから、ダークサンダーのベルトに職種変更してくれた。
行くぞ!
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