第163話 帰還


「そう言えばダークンさん?」


「なんだ、アズラン?」


「トルシェに聞いたんですけど、ダークサンダーのライトニングムーブってどうなんですか? トルシェが内容はダークンさんに聞けって。できればライトニングムーブを近くで・・・・見せてもらえって」


 トルシェのヤツいらんことを。


 前回は相手が生ものだったせいで大変な目に遭ってしまったが、相手がゴーレム系だったら、粉々になるだけだろうから大したことはないか。


「一言で言うと、アズラン並みのスピードで目の前の複数の敵に順に衝突して粉々にする感じだ。今度ゴーレムでも出てきたら見せてやるよ」


「ダークンさん、ゴブリンとか、ゴブリンとか、ゴブリンとか」


 妙にトルシェが煽るな。


「いや、ソフトターゲットはお断りだ。相手はあくまでハードターゲットだ」


 意味合いがあっているかもわからないしトルシェもアズランも意味合いがなんとなくは分かるがはっきりは分からないようなカタカナ横文字言葉を使ってこれ以上追及されないように韜晦とうかいしてやった。


 うまい具合にトルシェもアズランも、半分納得したような顔をしている。


「それはそうと、大神殿も間もなく建設が始まるだろ? 建設が始まる前は設計なんかを詰める必要があって忙しいかもしれないが、建設が始まってしまえばまたヒマになってしまう。大神殿の建設中なにをするかな?」


「タートル号で世界をめぐる?」


「俺たちだと、景色も見ずに酒盛りしてるだけだぞ」


「世直し旅は?」


「そうそう悪人もいないし、よその国までいって世直しするのもなんか違うだろ?」


「ダンジョンの最深部を目指す?」


「まーた、魔神が出てきたら嫌だぞ」


「いっそのこと、大神殿ができるまで、寝てましょうか?」


「だいたい、大神殿ができるって、何十年もかかるんじゃないか? そんなに長く寝ていられるのか?」


「それは、何とかなるでしょ」


「そんなに寝てたら干からびないか?」


「可能性は、ある? かも?」


「そう言えば、そもそも何で大神殿を作ろうと思ったんだっけ?」


「それは、信者を増やすためじゃなかったですか? ちょっと前にその話しましたよ」


「そうだったっけ。そういえばそんな気もしてきた。俺は俺自身が怖いよ」


「なら、大神殿の建設中も、少しずつ信者を増やしていくってことですかね?」


「そうなるな。となると、地道にアズランとフェアで診療所でもやってみるか?」


「それも手ですが、何十年間も診療所はちょっとやりたくないな」


「それはそうだ。ならば、どこかの楽園にでも行ってのんびり過ごしてみるか?」


「そんなところがあるんですか?」


「ワンルームの隣の扉を開けると田園風景の広がっていた場所があっただろ?」


「そうだったっけなー?」


「覚えてないならまあいいや。それで、そこにはたくさんゴーレムがいたんだ。そのころの俺もトルシェもゴーレムに苦戦するくらい弱っちかったから、見ないふりをしていたんだがな。後で考えたら、あの連中がワンルームの食糧庫の食料をいつもいっぱいにしてくれてたんだと思うんだ。ようは、敵ではなく、良いヤツ。もっと言えばあの拠点を作ったウマール・ハルジットがわざわざ作ったゴーレムなんじゃないかと思ったわけだ」


「覚えてないなー。でもそんな場所なら、みんなで探検しても面白そー」


「あの感じは、探検というより、のどかな田園だったんだがな。どうだ、とりあえず大神殿の建設が始まったら三人でいってみるか?」


賛成さんせーい!」「わーい!」



 そんな感じのことを話しながら酒盛りを続けて、ようやくタートル号は王都セントラルの西門前に到着した。



 いつものようにタートル号を降り、いつものようにタートル号をリクガメモードにして、最初にマリアに王都に帰って来たことを知らせようとみんなで並んで王宮に向かっていく。ジーナたちには、宿敵ハイデンは砂漠に飲まれて無くなったと伝えておいた方がいいな。



 いつものようにずかずか王宮の宮殿の中に入りアズランの案内でまずマリアのところに顔を出した。ちゃんとトルシェ2号が教師になって勉強していた。そこまでこんを詰めて勉強しないでもいいと思うが、黙っておいた。


 マリアの親衛隊としてトルシェの召喚したブラックスケルトンナイトはどこにいるのか分からなかったが、きっと陰に日向にマリアを警護しているのだろう。


 その後、ジーナの執務室にまわり、ハイデンを滅ぼしてきたことを伝えておいた。ジーナに与えているスケルトンちゃんの衣装が妙に立派になっている。今回は派手目の軍服のようなものを着ていた。宝塚路線で行くのだろうか? スケルトンをしゅとして考えることはできないと思うが、スケルトンには生殖能力は無いのでオスメスないと思うぞ。経験者だからわかるけど。


「今回ハイデンまで行ってサクッと叩き潰してきた。そういうわけで、ハイデンは今頃砂に飲まれて廃墟も残らず砂漠になっている。旅行者とか商売人が向こうに用事があるようなら気を付けさせてくれ」


 最初俺の言った言葉が理解できなかったようだが、そのうち理解したようだ。


「そういうことなので、白い粉の大元おおもともこれで潰せたわけだから、国内の生産場所を早く見つけて叩き潰してくれ。あいつらかなり大っぴらだったから簡単だろ?」


「は、はい。全力で取り組みます」


「もう一つ伝えることがあった。前回ジーナに会わなかったから言い忘れていたが、テルミナの市長が汚職をしていたので文字通り首にしてやった。後任を早めに送ってやれ」


「首に? ですか?」


「実際は、首チョッパだったかは知らんが、一族郎党皆殺しになったはずだ。汚職は国富に手を付けたんだから、当然国家反逆罪だろ?」


「そ、その通りです。あはは」


 笑い声がしりすぼみになっているぞ?


「そんなところだ。じゃあな」


「は、はい。失礼します」


 ジーナのヤツ毎回どもってたら、ほんとに吃音症になるぞ。そういった症状に万能薬が効くかどうかは興味があるが、気を付けろよ。




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