第147話 再び魔界ゲート
マリアがいるので
俺自身は何もすることがないので、スリットの覗き穴から周りの様子を見ているが、魔族の残党が暴れているような兆候は見つからないし、周りはタダの荒れ地なので特に変わったものもあるわけもなく、すぐ飽きてしまった。
こういった形で体に肉がついてしまい、骨楽器もできなくなってしまったから、暇つぶしの趣味を何か始めた方がいいな。何か楽器でも初めてみようかと思ったが、音楽の素養など骨楽器しかない現状。いくら女神だといってもちゃんとした楽器は無理だろう。そういうことで、手っ取り早く口笛を吹くことにした。
フュー、フュー。
音だけ何とか出せたが、これでは口笛とは言えない。将来これが曲になるのかね?
俺が妙なことを始めたものだからアズランとマリアがこっちを見ている。トルシェは集中して、収納キューブを手に持っていろいろ考えているようだ。
そんなこんなで陽も暮れてきたので夕食だ。マリアのために、ルマーニの王城でいただいた野菜や果物を皿に盛ってやった。果物はいいが、葉物野菜はドレッシングになるようなものがなにもないので諦め、結局野菜はトマトを切ったものくらいになった。
果物はリンゴにブドウそれにオレンジにイチゴといったものがあり、それだけでも体の小さなマリアが食べればお腹いっぱいになる。マリアにはそれに冷たいがハム、ソーセージ、串焼き、そういったものとバターとパンを出した。俺たちにはいつの酒の肴だ。
夜も更けてきたので、マリアはソファーの長椅子に寝かせ、俺たちはあまり騒がないよう酒盛りを続けた。
そのまま明け方近くまで酒盛りを続けていたら、タートル号が勝手に停止した。見れば、魔界ゲートに到着してたようだ。行き先を告げただけだったはずだがよくできている。ゲートの前では、トルシェの召喚したスケルトンたちが整列してタートル号を迎えてくれたようだ。訓練したわけでもないだろうにこちらも大したものだ。十匹のグリフォンたちは上空を舞っていた。
ハッチバックから飛び出して俺は魔界ゲートを近くから調べてみたが、見た目は何も変わっていなかった。
トルシェとアズランもタートル号から跳び降りてきたので、とりあえず、タートル号の尻尾から鳥人間の入った檻をトルシェに言って下ろしてもらった。俺は両手で鳥人間の入った見えない檻を抱えて、門のアーチ状に空いた暗黒の空間に投げ入れてやった。どうにかなるのかと思ったが何も起こらずただ鳥人間が暗黒の空間の中に消えていっただけだ。
門自体は壊せないようだが、この不気味な黒い孔を何とかしたい。どうにかして、この孔を閉じられないか?
そこで、ふと、聖剣のことを思い出した。
『特性:勇者のみ装備可能。魔族に対する各種の特効攻撃。
異世界連結門封鎖?
聖剣をキューブから取り出し、魔界ゲートに向かって両手で構えてみる。
別に何も起こらなかった。
おかしいな? 何か方法、聖剣の使い方があると思うが分からない。
「ダークンさん、ひょっとして、アズランの『断罪の意思』みたいに何かカッコいい言葉が特性の発動のキーかも」
なるほど、一理あるな。
よし、安直ではあるが、これだ!
「聖剣よ。門を閉ざせ!」
これだと思ったセリフだったが何も起きない。
これだ! と思ったんだがな。
待てよ、剣なんだから、これで魔界ゲートに切りつけなきゃどこの何に何をするのか分からないものな。それでは改めて、
「聖剣よ。門を閉ざせ!」
そして、俺は力を込めて聖剣を魔界ゲートに叩きつけてやった。
魔界ゲートに叩きつけられた瞬間、聖剣が眩しく七色に光った。
正解だったようだ。
魔界ゲートに浮き出ていた赤い模様が薄くなったような気がする。
もう一度だ、
今度も、聖剣が魔界ゲートに叩きつけられた瞬間、眩しく七色に光り、さらに赤い模様の色が薄くなってきた。
そして、三度目、四度目と聖剣を魔界ゲートに叩きつけたところで赤い模様の色が完全に消えた。
ゴゴッ、ゴゴゴゴ!ゴゴゴ……。
どこに隠れていたのか門には扉があったようでその扉が両側からゆっくりと閉じ始めた。
「わたしの言った通りだったでしょ」
「そうだな」
「やりましたね。これで一安心ですね」
「今のところはな。だけど、この門自体壊せないから、またいずれこの門が開くんだろう。そしたらまた面倒だ」
「すぐに門が開くことはないはずだから、大丈夫ですよ」
「俺たちが駆けつければなんてことはないが、門が開くたびにここに来るのは面倒だろ? 聖剣で魔界ゲートが閉じることが分かったから、この辺りに監視所でも設けて、ゲートが開きそうになったら聖剣で閉じるようにセントラルに帰ったらジーナに言っとくか」
「ダークンさん、聖剣って勇者しか使えなかったんじゃ? ダークンさんは女神さまだから使えたけれど、普通の人間だと使えないような」
「そう言えばそうだったな。それじゃあ、勇者をどこからか連れてくるしかないか。ところで勇者ってどこにいるのか知ってるか?」
トルシェもアズランも首を振る。
「そもそも、勇者って何かよくわかりません」
確かに。この世界にゲーム機とドラク○でもあれば勇者もイメージできるだろうが、そうじゃなきゃイメージできないものな。
まあ、逆に考えてみれば、この聖剣を使いこなせる人間が勇者ってことなのだろう。そういう意味では俺も勇者なのかもしれない。
もし、どこにも勇者がいないようなら、どこぞのラノベのごとく勇者召喚で呼び寄せることができるような気がしないでもない。勇者と言っても俺から言わせればモンスターのようなものだろう。だったらトルシェに頼んだら勇者の召喚魔法が作れるような気がする。
スケルトンたちは放っておいても消えてなくなるらしいので放っておけばいい。空で舞っているグリフォンたちは予定通り好きなところに飛んで行って好きに暮らせとトルシェに言って解散させた。
最後にもう一度魔界ゲートを鑑定して、セントラルに戻るか。
鑑定!
名称:魔界ゲート
種別:異世界連結門
特性:魔界と呼ばれる世界とこの世界をつなげる門。鑑定不能の金属製。現在魔素
あれ? 魔素充填率が開いているときは100パーセントだったが、閉まったら0パーセント。
ひょっとして、この魔素充填率が100パーセントになると門が開くのかもしれない。この充填率の変化を調べれば、いつゲートが開くのか予測できるんじゃないか? これも含めてジーナに丸投げだ。
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