第132話 出撃!
ジーナにつけていたトルシェ2号から連絡があり、至急王宮に来てくれというのでトルシェとアズランを連れて王宮に急行したら玉座の間の隣の会議室に連れていかれた。
全員が揃ったようで、会議室の扉が閉じられジーナが仕切って会議が始まった。
「陛下、お忙しいところ申し訳ありません」
一応酒盛りを止めて、ハイデン討伐に向かうための買い出しに行こうとしていたところなので確かに『お忙しいところ』呼び出しを受けてしまった。ハイデン討伐と言ったが、あの辺りは人も住めない砂漠にでもしてやろうと思っていたから、ハイデン消去が正しいな。
「何があった?」
「つい一時間ほど前、北方のルマーニ王国から急使が参りました」
「急使?」
「はい。馬を乗り継いで千六百キロの距離を六日で」
「それほど急ぐ理由があったということだな」
「その通りです」
「急使が伝えた、その内容は?」
「ルマーニ王国の王都から五百キロほど東にあるノルド王国が正体不明の黒き軍団に蹂躙され壊滅したという知らせです。その黒き軍団は、南ノルド地方を蹂躙しつつ南下中とのこと。すでに隣接するわが国の北部地方が侵されている可能性もあります」
「北部地方にわが軍はいないのか? えーと、クラウゼ軍務大臣?」
「周辺各国とも良好な関係を築いていましたので、守備隊の
「敵の規模は分からないんだな?」
「ノルド王国から救援要請が届いていないところを見ると、一撃でノルド軍が粉砕されノルドの王都も短期間に陥落した可能性があり、大軍の可能性が高いと思います」
「なるほどよく分かった。俺たちはここセントラルが落ち着いてきたのでそろそろハイデンを叩き潰そうと思っていたところだったが、先にその黒き軍団とやらを叩き潰してきてやる。
軍隊を含めて周辺に味方がいるとやりにくいからできれば避難させたやってくれ。といっても俺たちの方が到着は早いだろうから巻き込まれないように祈るくらいだな。北部地方とやらに行くには、北に向かう街道に沿って北上していけばいいんだろ?」
「はい。ここセントラルから千キロほど北上すればノルドとの国境になります」
「わかった。それじゃあ、急いで行ってくる。あとのことは任せた。千キロなら一日半の距離だ。三日で往復できる。戦い自体は十分もかからないだろ。何せ俺は女神だからな」
俺の豪語も、ここの連中はタートル号を見ているし、スケルトン軍団も見ている。ただの口先だけではないことは理解しているようだ。
「スケルトンたちはお連れにならないのですか?」
「俺たち三人で十分だ」
「陛下にこのようなお仕事をお任せしてしまい誠に申し訳ありません」
「本来なら、部下に任せた方がいい案件だが、そこは俺の権能のひとつである『慈悲』の表れだと思ってくれ」
「ははー!」
一同が俺に向かって
フォー!
素晴らしい。まさに理想的な国家中枢ではないか。これならわが千年王国は安泰だ。ワハハハ!
「それじゃあ行ってくる」
皆が起立したまま
「それじゃあ、そこらの店に寄って酒とつまみを補充しておこうぜ」
「はーい」「はい」
宿への道すがら目に付いた店に入った。その店は酒屋だったが、つまみも結構そろった店だった。
「ダークンさん、お酒がこの前買った時と比べかなり高くなってますよ」
「つまみの方も高くなってます」
「王都の門を閉じたりスケルトンを巡回させたりしたから社会不安と流通に支障が出たんだろうな。一時期は暴騰したと言っていたが、まだ平時には戻ってないようだな。まあこれもじきに落ち着くだろ。リストのところが大儲けしたはずだからちょうどいいんじゃないか?」
「そうですね。品数も在庫も問題なさそうだから気にせずどんどん買っていきましょう」
あれもこれもと見境なくどんどん買って行ったら、店の人にこれ以上は他のお客が困るので勘弁してくださいと言われたので、許してやった。
それでもかなりの酒とつまみをその店で用意することができた。これだけあれば遠征二、三回はできそうだ。
宿屋に戻り、タートル号を通りまで連れていき、そこで元の大きさに戻した。
今回は忘れず鳥かごを手にぶら下げている。
さっそくタートル号に乗り込み、
「
往来の邪魔になっているのに構わずタートル号が街中を移動する。タートル号は左側通行をしているので、通りには馬車一台分の間隔はある。ちゃんと左側通行をしていればいいんだよ。ちなにみこの国でも交通上の決まりはあるのだろうが、馬車が右側通行なのか左側通行なのかは俺は知らない。ただタートル号は左側を歩いている。
何度か通りを左折したり、右折したりして王都の西門に出た。
そこからまっすぐ西に行けばハイデン。少し西に進んだ先の十字路を右折して北上すれば北部地帯にそのうち到着する。王都内は通りを進むほかなかったが、ここからは街道を外れて進むこととにした。社会人じゃなく社会神だが、あんまり世間に迷惑をかけるわけにもいかないからな。
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