第128話 国取り成る
裏切り者が自供したことで、宰相その他の大臣たちがかなり動揺したようだ。
「どうだ? 俺の言ったことが真実だと分かったろ?」
「分かりました。陛下にはご退位していただくよう私からお伝えします」
宰相がそう言ったので、スケルトンを付けて宮殿の中にやった。王さまやら王族がどこに隠れているのか知らないが、スケルトンたちによく見つからないものだ。それともすでにどっかで拘束しているのかもな。どうでもいいか。
宰相と入れ替わりになるような形で次々と宮殿内にいた文官?とか女官?警備隊員?などがスケルトンに伴われて宮殿から出てきた。スケルトンたちは捕虜に対して手荒な真似はしていないようだ。
「ジーナ、王宮内にまだ裏切り者がいるかも知れないから、スケルトンが引っ立ててきた連中を残っている大臣と一緒に確認していってくれ。次は憲兵隊を使って王都内の裏切り者の一斉検挙だ! 王宮内の掃除が終わったら、大臣たちを連れていったん俺のところに来てくれ。俺はとりあえず、玉座にいる」
「はい」
「アズランはフェアと一緒に負傷者を『万能薬』で治して回ってくれ。とりあえずは宮殿の中からだな」
「はい」
フェアを肩に乗せたアズランが甲羅から跳び下りて宮殿の中に入っていった。
「トルシェは、スケルトン軍団の将校になるようなスケルトンを召喚できないか? スケルトンちゃんほどでなくてもいいが、スケルトン五十体ぐらいを率いる小隊長が欲しいんだ。簡単に命令を出すだけで小隊長が部下を使ってうまくやってくれるだろ?」
「分かりました。戦闘力というより頭の良いスケルトンですね」
「そうだな。頼む。とりあえず、十体もいればいいだろ」
「はい。それくらいならスケルトンちゃんと同じブラックスケルトンナイトでも行けますよ」
「それならそれでいい」
おそらくウィスキーの瓶を手にしたトルシェが蓋を取って、一口ごくりとラッパ飲みをした。
「うー、キックー!」
とか言って、また一口。
気づいたら、一般ブラックスケルトンより少し大柄で艶のある黒い骨のスケルトンが十体、タートル号のすぐ前に召喚されていた。
「一応、区別できた方が良いから、額に番号を書いておきました。1号、2号だとトルシェ2号とかぶっちゃうから、一番、二番にしておきました」
「それじゃ、一番、二番はスケルトン各々五十体を率いて王都の西門を占拠して封鎖しろ」
「三番、四番はスケルトン各々五十体を率いて、制圧済みの警備隊本部で王都内の警邏の全屯所の場所を確認後、屯所を閉鎖して回れ」
「五番、六番、七番はそれぞれ五十体を率いて王都東門、北門、南門を占拠して封鎖だ」
スケルトン軍団は、王宮内を完全制圧したようだ。王宮内で拘束した連中はジーナたちによって確認作業が続いている。手の空いたスケルトンたちはタートル号周辺に集合を始めたようで、宮殿前の人場にはざっと二千のスケルトンと千人ほどの被拘束者がいる。
「俺に忠誠を誓った者から拘束を解いてやれ。忠誠を誓う方法はもちろん俺に向かって『二礼二拍手一礼』だ!」
スケルトンたちにも俺の命令が理解できたようで、あちこちでタートル号の甲羅の上に立つ俺に向かって礼拝が行わた。
フォー! ……、
これはたまらん。クーデター冥利に尽きる。
解放された連中は各自自分の持ち場に戻っていったようだ。逃げ出してくれても別に構わなかったが、律義なことは美徳だな。俺の人望、いや神望のなせる業か。
これで、国王の件を残して王宮の方は片がついた。あとは、憲兵隊が裏切り者を一網打尽にすればいい。地方にいる裏切り者の知事は適当な理由をでっちあげて王都に呼び寄せて逮捕するだけだ。すみやかに実行するようジーナに言っておけばしくじりはしないだろう。
意外とチョロかった。ほんの三十分でこの国を乗っ取ったわけだが、実に危機管理意識の低い国だ。こういったところは今後大いに改善する必要がある。
さらに言えば、裏切り者の多さが異常だ。
自分の育った国に愛着くらいあるだろうに。上の地位に
「ダークンさん、裏切りにはやはりあの『白い粉』が関連あるんじゃないでしょうか」
「アズランの言う通りかもな。国として大々的に取り締まるのは当然だが、元凶のハイデンは確実に滅ぼしてやろう。『闇の使徒』の本山は叩き潰したが、まだ手足は残ってそうだものな。わが千年王国安寧のためだ。手抜きはせんぞ」
「王宮の制圧は完了したから、玉座を探してそこで一休みでもしておこう。
ここはジーナに任せたからよろしく頼む。
トルシェ2号たちはジーナの補佐だ」
「はい」「はい!」
タートル号で玉座まで乗り付けてしまうと
トルシェを引き連れて俺も宮殿の中に入っていった。タートル号はそのままだ。
玄関を入った先のホールにはいろいろな調度品が飾られていたが、クーデター騒ぎのなかどれも壊れていないようだった。ここにもわが軍団の規律が徹底していることがうかがえる。
「トルシェ、もうこの宮殿は俺たちのものだから、落ちてるものを拾い歩かなくていいんだからな」
「やだなー、そんなことぐらいわかってますよ」
「ならいいけどな。これから、外国の客を迎えることもあるかもしれないが、その時あんまり宮殿がみすぼらしいと舐められてしまうからな」
「はーい」
一応理解はしてくれたようだがいまの『はーい』の語尾はいつもと違って下がっていた。少し不満な気持ちが現れていたぞ。眷属のことなら俺にはなんでも分かるんだからな。
「そういえば、この王都には外国の大使館のようなものは無いのかな?」
「良くは知らないけど、あるんじゃないかな。アズランならわかるかも」
「やっぱりあるよな。ハイデンの大使館があるようなら襲撃して叩き潰しておくか?」
「そうですね。普通他国の大使館を攻撃しちゃうと自国の大使館が報復されるから何もできないけど、ハイデンを叩き潰すならハイデンの大使館はその後に叩き潰します?」
「ハイデンを『神の怒り』だかで叩き潰すなら、一々大使館の連中を区別できないし見殺しにしてしまっても同じだから、いつハイデンの大使館を叩き潰しても同じだ。よし、大使館の場所を確認したらスケルトンで襲撃してやろう。思い付きで始めたクーデターだけあって、いろいろアラが出てくるが、大した問題ではないな」
「実際、あっけなかったですね」
「そうだな。この調子なら、世界征服もチョロそうだよな、しないけど」
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