第126話 王国奪取! 2
タートル号が通りを左に曲がって大通りに出ると、前方に王宮の正門が見えてきた。
アズランはスケルトン部隊千を率いて、近衛部隊と憲兵隊を抑えにまわってもらっている。
「王宮が見えてきたぞ。おうおう、ちゃんと門が閉まってる。
トルシェ、タートル号の頭であの門にぶちかまして大丈夫か?」
「あんな木の扉なんて簡単に突き破れますよ」
「そいつは頼もしいな。まずはタートル号であの門をぶち破って、そこで降伏勧告だな。いちおう、武器を捨てたヤツは殺さず武装解除した上でひとまとめにしておこう。あくまで抵抗するヤツは当然殺して構わない」
「
王宮を囲む外壁の高さは五メートルほど。外壁の上には大型のクロスボウなどが据えられているわけでもない。これでは正直防御力などたかが知れているうえ、正門の扉も意匠は凝らされているが、強度など考慮されたようなものではないと一目でわかる。
外壁上に兵隊たちが何人もいたが、何をするわけでもなく俺たちを見ている。命令もないのに先に手を出すわけにもいかないなどと思っているのか? 王宮が攻撃されることなどないとタカをくくっているのか? 門は閉まっているから俺たちのことは伝わっているのだろうが、どうも危機管理意識が低いようだ。俺が王さまになった暁には、……。選挙してるわけじゃないからどうでもいいか。
兵隊たちが動いている時の立ち位置などから見て、それほど外壁の厚さもなさそうだ。チョロイ。
王都を囲む外壁が破られれば基本この国はお終いだろうから、これは仕方のないことだろう。俺たちのように自前の軍隊が王都内で召喚されるようなことは想定していなかったわけだ。
「突撃ー!」
王宮正門の五十メートルほど手前で突撃命令を出す。タートル号が速度を上げ後ろに続くブラックスケルトン軍団も駆け足になる。
「突っ込めー!」
バリバリー!
タートル号の頭が扉を突き破り、すぐにタートル号の本体が外れた両開きの扉にのし上がるような形で突っ込んでいった。
後ろに続くブラックスケルトン部隊がわらわらと破壊された門とタートル号の間を縫って王宮の中に突入していく。
タートル号の上から眺めていると、わが部隊の突貫がアリの行列の先端がばらけるような感じで非常に爽快だ。
「兵士たちに告ぐ!
すみやかに武装解除に応じるべし。
抵抗する者はわが精鋭の刃の露となるべし。
お前たちの父母兄弟はお前たちの無駄死にを嘆くぞ」
大きな声で、どこかで聞いたようなセリフを叫んでやった。
「それじゃあ、タートル号。宮殿入り口に向け、
どこに王さまの玉座があるのかは知らないが、タートル号は突き破った門から、宮殿前の広場を進み、目の前に見える宮殿の玄関口に向かって進んでいく。
タートル号の進む宮殿前の広場には武器を捨てた兵隊たち、わが黒き精鋭たちによって拘束されている。
まさに黒き精鋭、黒き軍団。響きもいい!
「王宮の責任者はいないのか?
我は『常闇の女神』。
我は、この国の王に王権を
すみやかに我の前に姿を現し
大声で叫んではいるのだが、反応がない。
「トルシェ、駅舎でやったあのうるさいファイヤーボールで脅してくれないか? それと、そろそろスケルトンの召喚はいいぞ」
「はーい」
トルシェの両手から、あの紫色のファイヤーボールがこんどは二十個ほど宮殿上空に向かって撃ちあげられた。
ドドドドドーン、ドドドドドーン。
ものすごい轟音が轟き王宮の敷地全体を振るわせた。いたるところから悲鳴も上がる。非戦闘員には脅しがききすぎたか?
玄関の扉が開き、上等な服を着たおっさんが、スケルトン兵に連れられて俺の方にやってきた。
タートル号の甲羅の上から、
「タートル号、停止!
お前がここの責任者か?」
「私が宰相のセルダンだ。キサマたちはいったいどこの何者だ?」
「お前は、自分の立場を考えて言葉遣いを考えた方がいいぞ。今回だけは大目に見てやるがな。我こそは『常闇の女神』。この国をもらい受けにまかり越した」
「『常闇の女神』だと。キサマは狂人か? いまお前たちはこうして王宮に土足で押し入ったが、救援依頼をすでに魔術師ギルドに向かわせておる。今に魔術師ギルドから応援が駆け付けてくる。それも、ながらく不在だった大賢者さまがギルドより直々においでになるはずだ。粋がっていられるのも今のうちだぞ。大賢者さまの魔術で木っ端のごとく吹き飛ぶがいい」
あのー? この方、何言ってんの? もしかして、このおっさんの言っている大賢者さまはトルシェ2号のこと?
「おい、おまえの言う大賢者さまは、俺の後ろに立っている女子にそっくりじゃないか?」
「まだ、お会いしたことはないので容姿までは知らぬ。名まえは大賢者トルシェ。少女の見た目にもかかわらず、その魔力は想像を絶するものと聞く」
「それじゃあ、その大賢者さまを待ってやろうじゃないか。
トルシェ、面白いことになってきたな」
「なんか、そこまで褒められると嬉しいような、背中が痒くなるような。これって、喜劇?」
「まあ、その一種ではあるな。2号が来るまで待ってるか? そういえばトルシェは離れていても、2号とは話ができるんじゃなかったか?」
「できます。今呼んでみます。
……。
もうすぐ特別陸戦隊八名全員を連れてこっちに来るようです」
「特別陸戦隊もか、あいつらも少しは役に立つようになったのかな?」
「どうでしょう。だめなら、あいつら殺してスケルトンに加工して、スケルトン隊に加えますか?」
「一応頑張ってたようだから様子を見てやろうぜ」
「ダークンさんは優しいなー」
「『慈悲』の女神でもあるわけだからな。フフ、ハハハ」
「あ、やってきたようです」
後ろを振り返ると、トルシェ2号が子分八人を連れてこっちに向かってくるのが見えた。
「おーい、急げよー」
『はーい』
壊れた門の向こうからトルシェ2号が走りながら返事をした。
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