第111話 王都へ帰還2
『闇の使徒』の神殿の地下大広間にある黒い渦を通って、ダンジョン内の小部屋に出た。『闇の使徒』の神殿は地下も含めて叩き潰してやったのは言うまでもない。
ダンジョンの小部屋からすぐ上り階段が繋がっているので、いつも通り三百段上って、頭のおかしくなったおっさんのいた部屋まで戻ってきた。その部屋を出て、反対側の大広間に。そこにある大鏡を抜ければ、王都にある屋敷の地下に繋がるダンジョンだ。
ここからは俺が先頭になって、前回と同じように鏡の枠を掴んで体を引き寄せてそのまま体を前に出し鏡の中を通り抜けて石組みの通路に出ることができた。
そのまま三人で来た道を引き返し、最後の小部屋に到着した。
小部屋にある梯子の先の竪穴が狭いので俺はナイトストーカーを収納して普段着になり、梯子を上って竪穴の出口から床に手をかけて体を引き上げる。鳥かごが邪魔だったが頭を物理的に使うことで何とか上り切ることができた。
玄関ホールには壊れた玄関の扉から薄暗い光が入ってきている。今の時刻は午後四時過ぎくらいだ。
「宿屋に戻ってシャワーでも浴びて、いつも通り英気を養うか」
「さんせー」「わーい」
解呪したことで動きの良くなった門扉から通りに出て、ちゃんと門扉を閉じてから宿屋に向かった。人さまの持ち物ならそんな面倒なことはしないが、今は俺たちの持ち物だからな。
待てよ、鳥かごに入ったサティアスをどうするかな。どう見てもこんなのが入った鳥かごをぶら下げて街中を歩くのは変だ。
「おい、サティアス。お前、鳥に化けられるか?」
「はい? はい、もちろんです」
「そうか。今から
「鳥ですか?」
「今言っただろ。鳥だよ、鳥。そうだな、オウムってわかるか?」
「わかります」
「じゃあ、オウムに化けてくれ」
鳥かごの中のサティアスの体の輪郭がぼやけて、そのうち鳥の輪郭になり、気がつけばオウムが鳥かごにいる。ただ、このオウム、ずいぶん顔がデカい。まあ、元がサティアスだから仕方ないか。
どこにいったのか今までサティアスが履いていた全く
サティアスは悪魔からオウムになっても思った通り
サティアスオウムを鳥かごに入れて、屋敷街から王都の繁華街を抜けて宿屋に戻る途中、オウムも王都の連中には珍しかったようで、随分人目を集めてしまった。この国でオウムは珍しくない前提で俺は考えていたが、この目立ち方から考えると、オウムは珍しい生き物だったようだ。
宿に帰り着き俺たちの泊っているスイートに向かったのだが、よく考えたら、普通の宿屋はペット禁止のはずだ。にもかかわらず、ロビーでも階段でも宿屋の従業員にすれ違っているが何も言われなかった。この世界の宿屋はペットOKらしい。意外と進んでいる面もあるようだ。まあ、スイートに泊っている上客だということの方が大きいかもしれないがな。
部屋に入って順番にシャワーを浴びていく。
汗などかいているわけではないが、シャワーを浴びるとさっぱりする。
「トルシェ。そろそろ下の食堂に行くから服を着ろよ」
「はーい」
いつも通りシャワーの後マッパで部屋の中をウロウロしていたトルシェに注意して、みんな揃って下の食堂に下りていき、いつものように陽のあるうちから酒盛りを始めた。
「カンパーイ!」
「カンパーイ!」「カンパーイ!」
ウメー!
「
食堂のお姉さんに、どっかのおっさん言葉で注文をしていく。
床に置いた鳥かごの
「お前も飲むか?」
「我に飲み食いは不要だ」
オウム声で返事があった。
サティアスオウムは飲み食い要らず、排泄もおそらくしないだろう。実に安上がりかつ手間いらずなペットだ。見てくれがもう少し良ければ高く売れるのだがな。そのうち、もう四、五匹悪魔を捕まえて、ペットとして売っぱらうか。さすがに、サティアスより見てくれはいいだろう。ワッハッハ。
俺たちは食堂が時間で閉まるまで上機嫌で酒盛りをして、いい気分になって部屋に戻った。案の定、俺は鳥かごを食堂に置き忘れたのだが、アズランがちゃんと持って帰ってきてくれていた。
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