第110話 王都へ帰還
俺が後光スイッチを点けてやったら、兵隊たちは恐れ入ったらしい。最初から全員腰が引けていたのだがもう完全に逃げ腰だ。
「『常闇の女神』? 聞いたことも無い名前だ。だが、ただものではない事だけは分かる」
おっさんが
好きにしてくれ。
木の実を食べながらトルシェとアズランが建物から出てきた。
パリッ、ポリッ、ガリッ、ペッ!
相変わらず行儀が悪い。アズランが俺がすっかり忘れていた鳥かごを持って来てくれた。
「それじゃあ、神に
「まっ! 待ってくれ!」
「待ってくれ?」
「いえ、待ってください。私たちはただ、この神殿にバケモノが現れたということで派遣されただけです。女神さまに
「なんであれ、
「分かりました。私が犠牲になりますから後の者は助けてください。この通りです」
そう言っておっさんが土下座してきた。
さすがの俺も、これには参った。おっさんの
「仕方ない。とっととどっかに
「はっ! ありがとうございます。
全員集合、すみやかに死体を回収して撤収するぞ! 急げ!」
「ちょっと待て。ここにいた『闇の使徒』の連中はどこに行ったか知っているか?」
「彼らは全員ではありませんが、城に避難しました」
「その城からお前たちはここに来たのか?」
「はい。いいえ、正確には城の近くの駐屯所から参りました」
「ほかにも兵隊はいるのか?」
「はい。……」
「答えたくなければそれまでだな」
「申し訳ありません。いまこの王都にいる兵隊は留守部隊で、実数とすれば二千から三千だと思います」
「残りはどこに行った?」
「はい、東にあるトラン王国に向け進軍しているものと思います」
『トラン王国? どこかで聞いた名前だな』
『ダークンさん、トラン王国はわたしたちの国ですよ』
『普段意識していないからすっかり忘れていた』
「それで進軍している部隊の兵隊の数は?」
「実戦部隊だけで二万。それに輜重隊が加わっています」
「わかった」
『こいつら、トラン王国と戦争するって言ってるが。二万くらいならたいしたことないが、どうする?』
『うーん、もしかして、この国の軍隊を叩き潰してやったら、わたしたちがトラン王国の英雄になって大神殿が立てやすくなるかもしれませんよ』
『それはあり得るな』
俺たちが黙って念話で相談していたら、頭と死体を回収し終えたみたいだ。
おっさんが帰りたそうな顔をしてこっちを見てるので、
「わかった、もう行っていいぞ」
そういったら、おっさんが俺たちに頭を下げて、部隊を
「それじゃあダークンさん、いったん王都に引き上げるとして、ここの目ぼしいものを拾ってからですね!」
「トルシェとアズランで、落とし物を拾い集めてくれ。俺はこの辺りにいるから」
「わっかりましたー」「はい」
トルシェたちが建物の中に入って行ったあと、俺は地面に座り込んで、木の実でも食べることにした。
二万の兵隊か。どの程度のものかは想像するしかないが、満員の野球場の観客数の半分と考えると、それほど大したことはない。なるべく固まっていてほしいが、主力となる部分を叩き潰せば後は消化試合だろう。楽しみだな。
しまった。いつごろ戦いが始まりそうかくらい聞いとけばよかった。
王都に帰ったら、警備隊本部にいる
それから、小一時間、半分目を閉じて休んでいたら、トルシェたちが帰ってきた。トルシェの顔はまさにエビス顔。じつにご機嫌で福々しい。
「よほどいいものが落ちていたんだな」
「フフフ。いろいろありましたが、金の延べ棒の山が一番の収穫かな」
「そいつは良かった。こういったところは貯め込んでるんだなー」
「ダークンさんの大神殿はこんなの目じゃないくらいわたしがため込みますから期待していていいですよ」
「おお。そういえば、白い粉の工場はあったか?」
「箱詰めの白い粉が一杯になった部屋はありましたが、工場は見当たりませんでした」
「その粉はどうした?」
「一箱だけいただいて後は燃やしておきました」
「ごくろう。それじゃあ、王都に帰るとしよう。
アズラン、道は大丈夫だよな」
「任せてください」
「それじゃあ、地下への下り口だけ残して、あとの建物はいちおう壊しておこう
『神の鉄槌!』」
今は瓦礫の山となった塔を囲むように、囗の字型に建てられていた『闇の使徒』の神殿のうち、俺たちが上がってきた階段のある部分を残してあとは『神の鉄槌』で叩き潰してやった。
その後、階段を下りていき、俺たちは地下二階にある大広間のステージ上の黒い渦の中に入っていった。
黒い渦に入る前、大広間を忘れずに壊しておいたので、ここからの出入りはかなり困難になるだろう。今現在、『闇の使徒』の連中でダンジョンに潜っているヤツがいたら、困るだろうな。ワハハ。
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