第102話 部屋掃除
扉を開けたその先は、当たり前かもしれないが普通の部屋だった。洞窟でなくて助かった。
「なんの意図がダンジョンにあるのか分からないが、普通の部屋だな」
部屋の広さは五メートル四方ほど。戦うには狭すぎる広さだ。天井には通路にあったのと同じ白色照明がついている。四つの壁の真ん中には今入ってきた扉を含め全部に扉がついている。また嫌な予感がしてきた。この先もずーと同じような部屋が続くんじゃないか?
「トルシェ、もしもこういった部屋が続くようなら、出てくる敵は部屋の広さからいって相当小型のものになると思う。そうだな、昆虫型とか蟲型とかといった手合いだ。数がそこそこいそうなので、俺とアズランでは手が回らない可能性もある。
そこでだ、俺が扉を開けたら、デカいのを一発ぶち込んで中を焼き払ってくれないか? デカいと言っても爆風は調整してな」
「はいはーい」
「まずは正面からだ。1、2、3で開くからな。アズランは壁の脇にいて爆風から身を守れ。それと、この鳥かごを頼む。トルシェは、ここだとコロコロマニューバは難しそうだから撃ったらすぐ俺の後ろだな。
それじゃあ、行くぞ。1、2、3」
扉を開いた瞬間俺のすぐ横を
ファイヤーボールでは爆発は起こるがそれ自体では煙は出ないので、すぐに隣の部屋の様子が分かった。
隣りの部屋も今いる部屋と同じ造りで、四つの壁に扉が四つ。今の爆発でも扉は壊れていないし、部屋に貼られた壁紙?も傷んでいない。もちろん天井の照明も健在だ。
床の上には、こぶし大の黒い塊が数十個転がっていた。いまの爆発でいちおう死んでいるようだ。足で潰したら、グチュッという音と一緒に、中から緑の液が出てきた。他の黒い塊を拾ってよく見るとコガネムシのような甲虫だったようだ。
「やっぱりいたな。こいつら見た目は虫だがタダの虫じゃないよな?」
「ダークンさんが潰した虫の体液が、床を溶かしてます」
「毒か?」
「おそらくそうでしょう」
「どんな毒も俺たちには効かないが、着てるものが汚れていやだよな。いちおうコロが全部きれいにしてくれるが、あまりいい気はしないものな。
思った通りだったわけだが、こんな調子で変なのが湧いて出るようでは保養所計画は白紙だな。そうと決まれば、もう二、三部屋確認したら、叩き壊しても問題ないだろう」
今の部屋に繋がっている後三つの扉を開けて中をトルシェのファイヤーボールで焼き払ってやった。どの部屋にも甲虫がいたようだ。
「これはダメだな。いったん通路に戻って、その先に進もう」
「はーい」「はい」
後ろを振り返って元の部屋に戻り、もう一度その先の部屋に戻って、通路に繋がる扉を開けた。
ガシャガシャ、シャリシャリ。
扉の先が通路のつもりだったのだが、そこはまた同じ部屋だった。今度は掃除をしていないので甲虫がうごめいている。扉を開けた俺に目がけて、数匹が高音の羽音を立ててぶつかってきた。いきなりだったし、なにも武器を用意していなかったので、甲虫はそのまま俺のナイトストーカーにぶち当たって潰れていった。
俺にぶち当たって潰れた甲虫が体液で糸を引きながら俺のナイトストーカーから大理石の床に落っこちていく。
嫌だな。すかさずトルシェがファイヤーボールを撃ち込んで中の甲虫を一掃したが、その間にも数匹俺に向かって甲虫がぶつかって自爆している。
それでも、いまの爆発で部屋の中はきれいになった。
「こいつは予想していなかったが、面倒なことになったな」
「行けるところまで、まっすぐ行くのはどうでしょう? 今となってはここが塔の中なのか、地面の下なのかは分かりませんが、いずれにせよ、どこかに行き止まりがあるはずです。それで全体の広さを推し量りましょう」
道理だな。
「アズランのいうようにしてみるとしよう。それじゃあ、通路があったはずのこの部屋から通路があった方向に突き進んでみるとするか」
「はーい」「はい」
こうして話している間だけで、ナイトストーカーの汚れはコロが触手で食べてしまってきれいになっている。
サンキュ、コロ。
それから俺たちは、扉を開けて、ファイヤーボールで掃除してを繰り返していった。
「アズラン、次で何個目だ?」
「この方向に進み始めて、二十個目の部屋です」
「このままだと切りがないな」
「でも、次の部屋が別の部屋かもしれません」
アズランが言うように、先がどうなっているか確かめないわけにはいかない。
「今度こそ違う部屋であることを願いつつ、いってみよー!
1、2、3」
シューー!
扉を開けた瞬間、これまでと同じに俺のすぐ横を
開け放たれた扉の向こうには薄暗い大広間が広がっていて、ファイヤーボールが向こうの方に向かって飛んでいる。
やっと、小部屋地帯から抜け出せた。
ファイヤーボールは行くところまで行って爆発したのだが、その大広間はいつか見た大魔王『ハムザサール』の大広間に酷似していた。
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