第58話 魔術師ギルド、信者獲得!
トルシェの秘書のホムンクルス、ユリーカ・クリプトが『体の悪いヤツを全員集めろ』という命令を忠実に実行した結果、最終的には百人余りの患者を診ることになった。
この魔術師ギルドの中にいったい何人くらい人がいるのか知らないが、相当の数の人間がいるようだ。
中には単に食べ過ぎのようなヤツもいたが、不思議なことにこれも万能薬を付けたインジェクターで一刺しするだけで治ってしまった。
治療が終わった連中には下の階にいるように言っていたので、全員の治療が終わったところで後光付きで俺はゆっくりと階段を下りて行った。
「おおおーーー! 女神さまーーー」
階段を数段残して少し高いところから、
「お前たちの病やキズは癒されたはずだ。わが権能に能わざることなし」
「ははーーー」
「そこで、二回礼!」
トルシェとアズランが患者たちの間に入って正式な礼拝を指導していく。
「そして、二回手を叩く」
パチパチ
「最後に一礼!」
みんなが俺の方を向いて頭を下げる。おおー、みんなが七色に輝いた。そして俺は、
フォフォフォーーー!!!!
あまりの気持ちよさに気が遠くなってしまった。
「……、今から、お前たちは私の信者だ、
「「ははーーー」」
よーし。今日は大収穫だ。こいつらが信者になったからには、すぐに口コミでこのギルド内に俺の素晴らしさが伝わるだろう。
次は事務長のところにいって、各塔への
あとは実行部隊の訓練だな。あいつらを鍛えてやって、この国の中にはびこる『闇の使徒』の連中を根絶やしにしてやるぞ!
そういえば、俺は女神さまなので、なにか信者に向かって『祝福』とかできないものかな。おそらくできると思うのだが、その方法がいまのところ分からない。俺が祝福してやれば、あの連中も少しは迫力が出てくると思うのだがな。
また三人で本館に戻って、業務を再開したらしい受付に行き、事務長の居場所を教えてもらった。受付嬢たちはかなーり俺たちのことを怖がっていたが、案内してくれといったら、若い方の受付嬢が俺たちを案内してくれた。
「こちらが事務長室です」
そう言ってから、案内してくれた受付嬢は逃げるように去っていった。実際逃げたのだろう。
事務長室の中には机が並べられていて、事務長の他、八人ほどが一心不乱に紙切れの束を見ながらなにやら帳簿のようなものを書いていた。まさに事務室だ。
「事務長、ちょっと」
事務長は下をむいて作業をしながら、顔も上げずに、
「しばらくお待ちください」
返事はするものの一向に作業を止めようとはしない。仕事を熱心にこなしていることはいいことなのだろうが、女神さまを待たせるとはいい根性をしている。
いい加減頭に来たので、おっさんの頭をはたいてやろうと思って近づいていったら、やっと頭を上げて、
「はて、どのようなご用事でしょう?」ときた。
怒り出すのをぐっとこらえて、
「今、塔で写本をしているだろ? あれが、ここの収入源の一部なんだよな?」
「はい、その通りでございます」
「あの人員を増やして、大量に写本を作ってもらいたいんだがな」
「それができればありがたいのですが、写本といっても魔術書ですので素人が写すわけにも参らず、今の人員で精いっぱいなのでございます」
おっさんの言っていることは理解できるが、どうも協力的でない受け答えだな。これは減点要因だな。
「そこは一応分かった。あと、ここで肉体強化して俺たちを襲ってきた連中がいただろ?」
「はい。存じています」
「あの連中なんだが、あんなに弱くては相手になめられてしまうだろ。俺たちが鍛えてやるから、広場に集まれと言ってくれるか?」
「懲罰隊の連中ですね。私も以前からさほどの実力はないのではと思っていました。すぐに広場に集合させますので、広場の方でお待ちください。現在、出先に出ておらず、このギルド内に残っている者は十名ほどでしょうからよろしくお願いします」
こんどはいやに協力的だな。少なくともこのおっさんは仕事はできるようだ。そこは加点要因だな。
俺は管理職として下のものの評価をするのだ。評価結果をギルドの最高責任者のトルシェ議長に報告する必要があるからな。これを
「それじゃあ、俺たちは広場に出ているから、後は頼んだ」
「了解しました」
俺たちが部屋を出たところで、すぐにおっさんが小走りに階段の方に駆けて行った。フットワークが軽いところも評価できるな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます