7話 : 結婚式の準備
戦国時代に来て3か月。毎日の恒興による鍛錬も何とか耐えられるようになってきた。
腕にこぶを作りながら自画自賛をするのも段々癖になって来た気がする。大した量は付いてはいないが。
「拓海い!ちょっと来い!」
昼飯を食べ終わってゆっくりしていた時だ。恒興から呼び出しがかかる。
「まだ鍛錬はしたくないんだけど……」
「違う、今日は特別訓練だ!」
どうやってゴネようか、そう考えていた思考の方向が変わる。特別訓練と言う響きは嫌な予感がするが、いつもの打って打たれる地獄よりかは幾分ましだろう。
俺は恒興の後に着いていく。
やってきたのは巨大な部屋。宴会なんかを行う場所と聞いていたが、まだ入ったことはなかった。
中では林秀貞や内藤勝介、平手政秀らを中心とする家臣たちが総出で何かをしている様子だった。
「この部屋……でけえ……何人入るんだ?」
「200人くらいじゃないのか?信長様の父上である信秀様は宴会好きの人だからな。こういう部屋があるんだ」
織田信秀……今の織田家の当主か。
「成程。それで?俺は何をすればいいの?」
「お前も二週間後に信長様の婚姻式があることくらい知っているだろう。それの準備だ。何しろ相手は隣国の斉藤道三の娘だからな。しっかりとした準備をしなければならない」
それを手伝え、ということらしい。
確かにこれは特別訓練と言えなくは……ないか。いつもよりは楽そうだから頑張るか。
大名同士の結婚式は友好関係を維持するための『人質』のようなものに等しい。
だからこそ、婚姻は家同士の友好のあかしなのだ。
新郎側は、新婦を丁重に扱わなければならない。まずは、斉藤道三の居城である
新郎側の重臣が主人と共に向かうのが習わしらしいが、俺は新参者だということで行けないらしい。もしかしたら、斉藤道三に接触できると思ったのだが……残念だ。
そして、まず俺が用意しなければならないのは重臣と主人の衣装、計6着。
恒興からは『どうにかして用意しろ』と言われた。要はここで俺の実力を見たいという意図があるのだろう。
ここに来て3ヶ月、伊達に何もしていない訳じゃない。
俺は1つの店の暖簾をくぐった。
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