第69話 三騎士VS魔神
「おい、お前がさっき言っていた質問に答えてやるぜ。この国では俺たちがトップだ。一人、エルフの化け物がいるがな」
グロウの言葉に、魔神は顔をしかめる。
三人を値踏みするような視線を向け、落胆した表情をした。
「お前たちが加護を持っているはずがない。ヤツらの加護を受けてその程度であるわけがない。微塵も神聖力を感じないしな」
シャインは涼しい顔をしているが、グロウは魔神の言葉に苛立ちをみせる。
それをライルが抑えていた。
「リスクは抑えて、三人でやるんだ」
「うるせぇ、わかってる」
「わかっていると思いますが、狙いは核です」
シャインが魔神を見ながら、二人に確認して動いた。
「エクスプロージョン」
シャインが魔法名を口にすると小さな強い光が出現し、そう思ったときには爆発が起きている。
それを合図に、三騎士たちは魔神を取り囲むように動いた。
殲滅を目的とした魔法ではないため、魔導士たちのように魔力を練り上げたエクスプロージョンではない。
とはいえ、個人の戦術レベルでいえば十分な火力がある。
土煙が起こったところで、ライルが風の魔法でそれを吹き飛ばす。
それで見えた魔神は、手の平に火傷のような傷を負っていた。
傷からは青い血が滲んでいて、それが一瞬で青い剣となる。
その剣を最初に振り下ろしに行った先はライルだった。
エクスプロージョンの効果から身体強化をしているのは明白だったが、反応できないほどではない。
ライルが魔神の剣を受けに剣を振る。
同時にグロウとシャインも動いていた。
ライルが魔神の剣を受けると、魔神の魔力が圧力のように押し潰しにきてライルは弾き飛ばされてしまう。
弾かれる瞬間に魔神が嘲笑するような顔をライルに向けていたが、そのタイミングでグロウの大剣が振り下ろされる。
同時にシャインが刺突を放っていた。
どちらの剣も、軌道は魔神の核へと向いている。
どっちかを剣で捌けば、片方が核へと届くタイミング。
そして青い剣が捌いたのは、グロウの大剣だった。
「ッチ」
舌打ちをして魔神を睨んだときには、グロウもライルと同じように弾き飛ばされる。
そしてシャインの剣が届くと思われたところで、こっちも弾かれた。
シャインの剣は、魔神の尻尾によって弾かれていた。
「レオール」
ライルは風の魔法で弾かれた身体を制御し、三連撃目へと繋げる。
背後からの強襲。核は左側になるので、ライルは左から右へと払う形で剣を振った。
魔神はそれを、半円を描くように身体をズラして避ける。
それでも剣の切っ先は魔神の胸部を浅く斬った。
剣を振り抜いたライルへ、魔神の青い剣が迫る。
「キャステル!」
剣を持つ魔神の右腕を、グロウの土魔法の壁が下から突き上げた。
剣とは違い、腕の動きを抑えることで魔神の意表を突く。
それは一秒から二秒の隙を生む。
たかが数秒ではあるが、戦闘においての数秒は生死を分ける時間となる。
「オラァァァーー」
大剣を両手で持ち、上から叩きつけるように魔神に振り下ろす。
そしてグロウの大剣は、魔神を斬った。
「ッチ」
細い魔神の尻尾は、グロウの大剣によって斬られた青い血が出ていた。
魔神は右の胸元についた傷と、尻尾についた傷を確認する。
胸の傷は浅いが尻尾は千切れかかっており、魔神はそれを見て驚いているようだった。
「確かにそれなりの力は持っているようだ。少し侮り過ぎていたらしい」
「ふざけんな。俺の大剣がそんな細い尻尾に止められたのかと思うと頭にくるぜ」
「だが、斬ることはできる。斬れるということは、魔神といえど倒せるということだ」
シャインの言葉で、グロウとライルがそれに頷く。
「倒せるものなら、倒してみるがいい。フレイムバースト」
楽しげな笑みを浮かべ、魔神が豪炎魔法を放った。
デューンはクレアの近衛隊を連れ、西地区へと向かう。
途中炭と化している人であったものを見た。
ここまでするには、相当な魔力が必要になる。
これだけでも魔神が、どれほどの敵なのかが理解できることだった。
デューンは途中何度か指示を出しながら、報告にあった神殿へと向かう。
そこでは途中で報告を受けた通り、三騎士が魔神と交戦していた。
魔神の白い肌にはいくつも青い血が流れ、三騎士が連続で斬りかかることで魔神を追い詰める。
ダメージを与えられないのか、視界を遮ることなどサポート的に魔法を駆使して戦闘を行っていた。
「ゴードン。近衛隊はあれの周囲に展開して、魔法で三騎士を援護だ」
目の前の三騎士たちの戦闘を見る限り、数でどうにかなる相手ではなかった。
傷を受けているとはいえ、魔神は三騎士を同時に相手している。
それでも渡り合うような相手であり、そんな戦闘に他の騎士が加わっても邪魔になるだけだった。
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