第十三幕 女豹に敗れた代償は“ドン底から飛ぶ事“
賭けに負けた。
そして、負けたのに受け取った。
“アサミさんの全部“
アレは、ギャンブルだった。
俺は何を差し出せばいいのか、もう明白だった。
“絶対に挫けたりしない“
“俺は、あのアサミさんの希望なんだ“
“全力だ。俺は、信じる道を、ただ全力で生きるだけ“
それから二年。
家に帰る。
ボロボロのアパートだ。
何もない。
こんな、何もないボロボロのアパートが
今の俺の“城“だ。
ポケットに手を入れる。
“82円“
思わず、笑いが込み上げる。
なんだそれ。
通帳に残高などない。
俺は、アサミさんから“全て“託され
全力で生きることにして
信じる道を、ただ全力で生きた。
しかし、現実はとてもじゃないが四方八方の
“壁“ “壁“ “壁“
俺は飛ぶんだよ。
かつてない、ドン底からでも。
二年間、必死だった。
“これから福祉の時代が来る“
“終身雇用の絶対性が疑われてくる“
“乱立する福祉施設、供給が需要を上回り“
“お客様が当然のように施設を選ぶ時代が来る“
“その時に、選ばれる為に、福祉業界は、優秀な人材を確保するのに、今まで以上に焦ることになる“
だから、飛び込んだ。
福祉業界。あえて“正社員“にならず
バイトとしてあちこちを掛け持つ。
各施設で、良いところダメなところを、見据える。
利用者様にするのは支援だ。
サービスじゃない。“サポート“だ。
誰にも、理解されなかった。
語れば、笑われる。
なんだこいつ。偽善者。
そんな声にも怯まず、握手を求めて、手を叩き落とされても
全力で、駆け回った
初めて出来た彼女は、そんな俺に愛想を尽かして
共通で貯めていた“財産“を持って
出て行った。
そのコを責める気もない。
当然だ。
俺は、世間から見たら“ただのフリーター“だった。
“正社員になりなさい“と言う親の言うことも
ある種、常識的な事だった。
ドン底。
無い。もう、俺には。
【マインドを変える】の。
【常識を疑う】の。
もう、3日間も、何も食べてない。
金の為じゃない。
金の為じゃなく、人を笑顔に、困っている人に、手を。
“偽善者“ “何言ってんの“
世の中、金じゃない。と思っていた俺は。
紛れもなく。
金のせいで、飢えていた。
“もう“
“疲れた“
【飛べるはず】
“無理だよ““やっぱり俺は“
【土にかえるか?】
“土に還る“か。
「死にたい」
電気も、止められている。
真っ暗だ。
何も、見えない。
バン!!!
なんだ。なんか今、音が。
「おい!タロちゃん!」
誰だ。
大学生の時に、唯一、俺のことを“面白いなぁ“と言ってくれた。
そこから、ずっと、
“最近どう?“と聞いてくれてた。
宮本。
俺は友達なんていない、とずっと。思い込んでいた。
“助けてくれ“
“当たり前だろ“
コイツは、俺と同じ、福祉業界に入っていた。
貯金など、あまり、出来てないはずなのに
30万円。これ、全部返すまで、死ぬな。
電気が通った。
瞬間、スマホから通知音が鳴り止まない。
電源が切れていたスマホ、充電器に刺しっぱなしで放って置かれたスマホに、電力が通り
今まで来ていたメッセージが次々と
“最近どう?“
“大丈夫か?“
“不在着信““不在着信““不在着信“
“元気かー“
“生きてるか?笑“
“おーい“
“不在着信““不在着信“
“その後、どうだ?“
“そんな施設、燃やしちまえよ。笑“
“不在着信““不在着信“
なんでこんな、何も持ってない俺を。
【アナタは、私にないものをたくさん持ってる】
沖縄から、小学生の時の同胞から小包が届いた。
中には“しょーもない職場からの脱出を心よりお祝い申し上げます【退職祝】とかかれた封筒“
中には5万円。
なんだよ。
俺は、まだまだ、持っていたじゃないか。
飛ぶんだよ。
死んでたまるか。
俺には、こんな俺に手を貸してくれる“友達“がいたんじゃないか。
なんて愚かだったんだろうか。
人を助けるのにも“金“がいる世の中で
“金“の為じゃないと、貧民がただ言っても。
誰も聞きやしないんだ。
“わかったよ“
“稼いでから言ってやる“
“金を、持ってから、言ってやる“
“働くのは楽しいからだ!勉強は楽しいんだ!辛い辛いと思ってるから辛いんだ!
楽しんでやれば良いんだ!金の為じゃないんだ!そしたら、心は晴れるんだ!“
ドン底から這い上がった。
そうだ。俺は、みんなに助けてられて、もう一度、
飛ぶ為のチャンスを得た。
“ひっくり返してやる“
“人生はネタ作りだ“
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