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浅層から深層へと繋がる道は、いわゆる雨水貯留の為のルートである。世界規模で異常気象が進んで局地的なゲリラ豪雨が頻発するようになって、都会の排水システムが見直されたのは必然で、オーバーフローする排水を一時的に蓄えておくのが、いわゆる深層に構築された雨水貯留システムだ。東京でストリートチルドレン問題が手の施し様の無いほどに深刻化した背景には、この治水目的で開発された深層が一役買っていて、この複雑怪奇に入り組む地下システムに見事に順応した彼らは、それらのほぼ全てを掌握しているのだった。そして彼らが築く地下社会は、東京だけでなく川崎、横浜、或いは船橋、大宮方面にまで拡大していた。
近代的な治水地下道と雨水流出抑制・貯留設備群。そしておそらく明治、大正の頃より徐々に拡張を重ね、今でも休むことなく伸張を続けているのであろう従来型の排水・下水道。そこに先の大戦中に掘られたと思しき防空壕跡などが、本来であれば存在する筈の無い
その閉じた空間を解放へと導く
『J』を出てタカヒロ達と別れたリョータは、レジ袋に詰めた食料と乾電池を抱え、自分のねぐらに向かって暗い下水道を一人で歩いていたが、そこは今朝
その二人組はリョータにしてみれば愚図でのろまで、リョータの仲間が奴らに掴まったことは一度も無いが、しょっちゅう顔を合わせては鬼ごっこを繰り返しているうちに、奴らが徐々にリョータ達の行動パターンを掴み始めているのを感じている。少し嫌な予感がしたリョータは、最短ルートではなく、いつもと違ったルートを通って帰ることにした。
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