第50話 文庫本にまさかの……

 今日は朝から雨が降っています。涙雨に思えるのは『第8回カクヨムWeb小説コンテスト』の中間発表で自作が通過しなかったからでしょうか。

 初めて書いた私小説は私の人生が詰まっています。苦しい内容が多くて読んで楽しいものではないと思いますが、タイトルは自分なりに気にいっています。二つ目の心臓が止まっている、というミステリを彷彿とさせる感じがポイントです。

 でも、通りませんでした。この雨空が一層、心を暗くします。このような時に備えて発奮材料は手元に置いてあります。自著はかなり古くて文章が少しアレ(拙くて)なのであまり見ることはありません。賞状や盾は見慣れてしまって心に響かなくなりました。


 そこで選評付きの文庫本です。私のプロフィールにもありますが、ショートショートに熱中していた時期がありました。その中でも特に力を入れていたものが小説現代で長く続いていた『ショートショート・コンテスト』です。

 私は三回の入賞経験があります。収録された文庫本は『ショートショートの広場14、15、20』になります。選者は星新一ほししんいち先生から引き継がれた阿刀田高あとうだたかし先生になります。採点方式で10点が最高得点になります。ですが、阿刀田先生は20のあとがきで10点は付けないと書かれていました。実質、9.5点が満点になります。自作の最高得点は9.0で20に掲載されています。ありがたいことに選評で『トリッキーな作品の技術』として挙げられていました。落ち込んだ私を奮い立たせる最高の一文です。

 久しぶりに掲載された自作を読んでみました。やはりと言いますか、今の私が見ると少し文章が幼く感じられます。大体の流れは良い感じで進み、最後の一文で驚愕しました。


 自作なのでオチは事前に知っていました。そこで驚いた訳ではなくて、意味の重複を見つけました。15年の歳月を経て初めて、その事実に気づきました。

 男性カウンセラーが『満面の笑顔』で頷いていたのです。顔の部分が重複していました。『馬から落馬』や『満天の星空』みたいな状態です。

 痛恨のミスでした。過去の恥ずかしい部分を自ら暴露した状況になりました。ただ、あまり落ち込んでもいられません。引き受けた仕事がありますので。

 今年、最初のエッセイを書いて、どうにか落ち着きました。そのあと、少しネットで調べてみたのですが『満面の笑顔』は誤用ではなくて認められているみたいです。ほんの少しですが、ほっとしました。作品が公開された時は違いますが……。


 まだ雨は降っています。黒雲は少し薄れて綻びたところが明るくなっていました。

 明るい未来の兆しに思えてきたところで今日の執筆を始めたいと思います。

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