第47話 柿の木の下で

 家の庭には一本の柿の木があります。そこそこに伸びて五メートルくらいになりました。位置としては庭の片隅にあり、あまりじっくりと見ていません。

 昨日は天気がよく、縁側で庭を眺めていました。それでは物足りなくなってゴムサンダルをいて歩き回ります。

 日頃であれば目もくれない柿の周りを見てみますと大きな蜘蛛の巣がありました。半日陰の場所で中央には腹の膨れた肝っ玉母さんのようなジョロウグモがいました。枯葉が引っ付いていても気にしていない様子。デンと居座っています。

 庭を飛び回る蝶の数は減りました。シジミチョウはいますが、ジョロウグモの餌の役割を十分に果たしているとは言えないでしょう。

 ぼんやり考えていると見つけました。足元近くのジャノヒゲにバッタがいました。寒さで身体が上手く動かないのでしょうか。本来の跳躍を見せないで、のろのろと歩いています。

 私は手で捕まえました。無理を承知で蜘蛛の巣に投げ付けます。ギリギリで下部に引っ掛かりました。振動に反応したジョロウグモは即座に動きました。飛び掛かる勢いは直前で慎重な行動に変わりました。

 バッタを長い足先で小突きます。暴れると少し身を引いて、そろそろと近づいてまた足を伸ばしました。

 未知との遭遇なのでしょうか。考えてみればあの巣の位置に掛かる昆虫は蝶や蛾になるでしょう。そこにバッタが投げ付けられれば、驚くのも無理はありません。初めての出会いを演出した私は興味をもって見つめます。

 三十分が過ぎました。進展がありません。ジョロウグモは小突いては引っ込みを繰り返していました。諦めた私は家に戻りました。


 日が変わり、雲一つない晴天を迎えました。私は目覚めると真っ先に庭に出ました。柿の木に直行して蜘蛛の巣を覗き込みます。

 定位置にいたジョロウグモの横に昨日のバッタがいました。餌として認識されたようです。害虫駆除にもなるので私としては満足のいく成果と言えます。

 今日の日記を書き終えたあと、私は庭に出るでしょう。クローバーやニラの密集する辺りを手で掻きわけてバッタを探すと思います。

 時に空を見て、何をしているのだろう、と思うところまでがセットです。

 それではまた!

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