第41話 春の訪れ

 こちらは桜が満開です。春を感じる風景ですが、私にはもっと身近に春があります。庭の隅に置かれた火鉢ひばちはメダカの住処になっています。エッセイで何回も書いてきたので知っている人はいると思います。

 その火鉢は自然に任せていて雨の日が続くと水面が上昇します。雀や野鳥のちょっとした水飲み場になります。メダカの方でも心得ていて、その時は底の辺りに沈んで遣り過ごします。

 今朝のことでした。カーテンを開けて薄青い空を眺め、窓を開けました。庭にある火鉢に目を向けますと見慣れない物が浮いていました。水に落ちた羽虫でしょうか。スリッパをいて近づくと動きました。目を凝らして、初めてわかりました。

 アメンボでした。羽があるのでどこからか飛んできたのでしょう。毎年ではありませんが、春の時期になると立ち寄るようです。滞在期間はよくわかりません。気がつくといなくなっていることがほとんどなので。

 私は小さな春に気分をよくしてメダカにえさを与えました。寄ってくる多くのメダカにアメンボは迷惑そうに横へと退きました。風で餌が流れます。アメンボの下にメダカ達が大口を開けて殺到して、かなり居心地の悪い状態になりました。

 微笑ましいやら、目に騒々しいやらで私は微笑むように見ていました。

 小さな春に心が和み、その気持ちが薄れる前にエッセイに残そうと思った次第です。今日のランチはこれまた春らしく、菜の花のパスタになります。

 春尽くしの今日なのでした。

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