第39話 庭の火鉢が
久しぶりのエッセイになります。厳しい寒さが緩んで、それらしい季節になりました。庭の片隅にある火鉢はメダカの棲家になっていました。前にも書いたのですが、夏場にホテイアオイが予想以上に育ち、酸欠状態になりました。ほとんどのメダカは息絶えて数匹が生き残りました。
それも最後は一匹だけとなり、厳しい冬を迎えます。時に天候に恵まれ、水面が凍らない時がありました。私はその都度、身を屈めて火鉢の中を覗き込みます。動く物はなくて少し悲しい気分になりました。
そして今日、三月二十五日。とても暖かく、庭の手入れをしている時に何げなく火鉢に目を向けました。驚いて声もありません。悠々と泳ぐ一匹のメダカがいました。貫録を醸し出す大きさで久しぶりの日光を楽しんでいるようでした。
私は急いで家に駆け込みます。新たにメダカを育てていたバケツを手にして火鉢に全てを注ぎ込みました。酸欠が頭に過り、新しい水をドボドボと継ぎ足しました。
すると昔が戻ってきました。大小、様々なメダカが陽の光を浴びて気持ち良さそうに泳いでいます。懐かしい光景に涙ぐみ、私は何をするでもなく、その様子を見つめていました。
ようやくメダカの日常が戻ってきたように思います。狭いバケツで生活していたメダカ達は元気に泳ぎ回ります。私の姿や餌に釣られることはなくて自分の意思で行き先を決めているようでした。
何げない一場面ですが、読者の方々にこの気持ちが伝わればと思い、更新を決めました。庭の手入れに戻ります。
と書きながらどうしても目は火鉢の方に――。
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