第32話 バケツの縁に
朝からすっきりと晴れました。天気予報では午後から崩れるそうです。その前にすることがあります。
縁側の隅に置いた三個のバケツの確認です。ホテイアオイの根にメダカの卵が残っていれば、また新しい命が生まれて元気よく泳いでいることでしょう。
わくわくしながら縁側に出て、一番、大きなバケツから見ていきます。水面に当たる朝陽を手で遮って中腰になりました。動いているものに目を向けるとボウフラでした。意図しないものがすくすくと育っていました。
中くらいのバケツはホテイアオイの量が少なく、すぐに見終わりました。期待したメダカの子供はいませんでした。
最後のバケツに目を向けます。縁に何かいました。コガネムシのようです。歩きながら内側に寄って水面に触れる前に、また縁に戻ります。同じような行為を続けながら一周しました。
そして二周目に入りました。同じような行為が続きます。水を飲みたいという強い意志が伝わってきました。コガネムシの感覚では水面が遠く感じられるのでしょう。滑り易い足場にも苦労をしているようでした。
私はその様子を歯痒い気持ちで見ていました。二周目も降りられず、三周目に入りました。静かな動作に秘められた熱意を感じます。
ですが、途中で見るのをやめました。さすがに容易に想像できます。
とか言いながら、またバケツを見ることになりますが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます