第21話 お風呂のイメージ

 一仕事を終えた私は汗ばんだ肌を気にして先程お風呂に入りました。

 掛かり湯を済ませて湯船に肩まで浸かっていますと、いろいろなアイデアが頭に浮かんできます。個々の要素が上手く結び付きますと小説の形態になります。

 今回は亡くなった父親のエピソードが浮かんできました。


 父親のお風呂の入り方は独特でした。私が子供の時分は気にしていませんでした。そういうものだと思い込まされていたのかもしれません。

 ある日、父親と母親が口論となりました。

「あんたね、いい加減にしなさいよ」

「いや、そうはいうが俺なりの入り方で」

「もったいないでしょ! 今後はダメだからね」

 厳しい母親の一言に父親は項垂れ、薄い髪が顔に掛かります。今、その姿を思いますと落ち武者に似ているように感じます。

 本題に戻りますが、父親は浴槽に並々と湯を入れます。表面張力で盛り上がるくらいまで注いだあと、勢いよく中に入ります。当然、湯は溢れてザッバーンと流れ出します。その音が爽快でやめられなかったそうです。子供の私を味方に付けようと身振り手振りで教えてくれました。

 私は笑顔で母親の味方になりました。


 今の私はたまに父親と同じことがしたくなります。もちろん、もったいないことに変わりはありませんが、想像するだけで身が軽くなります。

 水道代が割と高いところに住んでいる為、試したことはありません。

 でも、いつかは挑戦したいと思います。懐が暖かい時に。

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