第18話 カラスの話
カラスの鳴き声が目覚まし時計になりまして、たった今、目が覚めました。遠くの方ではウグイスの声も聞こえます。練習の成果が出てかなり上手に鳴けるようになりました。
少し肌寒く、薄いカーディガンを羽織り、薄明るいカーテンを開けました。窓の向こうは真っ白。濃い霧が立ち込めています。幻想的でしばらく眺めたあと、急にエッセイが書きたくなりました。
私の筆名の話ではなくて鳥の方になります。
日曜日の昼下がり、何も予定が入っていない私は縁側に座っていました。すくすくと育つ農作物を目にして、何とはなしに料理の一品を考えていました。その思考に羽音が割り込んできました。上の方から聞こえてきます。
目を上に向ける前にドサッと黒い物体が落ちてきました。私から見て右斜め前、生い茂るクローバーの中で二羽のカラスが羽ばたきながら取っ組み合いの喧嘩を始めます。お互いが鋭い爪で相手を押え付けようとしていました。私の存在に気付いていないようでした。
二羽のカラスの力は
喧嘩の仲裁、それとも加勢なのでしょうか。騒動は収まりました。
「それにしても……」
現場となったクローバーの一部に穴が開きました。人間が手で引き千切ったような見た目になり、置き土産として一本の黒い羽が残されていました。私はサンダルを履いて近付き、摘まみ上げます。羽はピンと立ちました。芯の部分は相当に硬く、骨を想像しました。
記念品として持ち帰る気分が萎えて、結局は庭の隅のコンポスト(堆肥用の入れ物)行きとなりました。
早朝にカラスに起され、カラスのことを書く、黒羽カラスでした。
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