第13話 大きくなりました

 天気の良い日に縁側に出ました。絵に描いたようなスカイブルーに何となく気分も晴れやか。視線を下に向けますとクローバーの緑が目に優しく映ります。白くて丸い、綿帽子のような花が甘い匂いを漂わせています。もっと間近に感じたくて座って見ることにしました。

 小さな羽音が聞こえてきました。ミツバチがクローバーの花の蜜を求めて飛び回っていました。そこで、あれ? となりました。一匹のミツバチの動きが他と違います。花に近づいた状態でふらふらと飛んでいます。


 蜜集めをしなくていいの?


 首を傾げた状態で近づいて見ますと、花の上にカマキリの子供がいました。以前、私の家の庭で生まれたものと同じなのでしょうか。身体は大きく育ち、見た目は二センチを超えていました。


 そういうことですか。


 ミツバチはカマキリの子供が邪魔で、花に止まりたくても止まれない状態になっていました。興味深げに見ていますと、すぐに決着となりました。僅かに空いたところにミツバチが飛び乗り、花心に向かって頭を突っ込みます。小さなお尻を盛んに振って蜜を吸い上げていると、隣にいたカマキリの子供はぴょんと跳んでいなくなりました。

 ミツバチは数秒で他の花に移っていきました。カマキリの子供の再登場を期待しましたが、現れることはありませんでした。

 今回、昆虫の視点になることで初めて目にしました。当たり前のように繰り返される虫の日常ではありますが、私の胸の扉をコツンと叩く程度の影響はありました。

 まずはエッセイに書いて、他のアイデアと結び付き、小説になる日をじっくり待つことにします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る