第11話 憩いの場所

 そろそろ寝ようかと思ったのですが、妙に目が冴えて眠れません。そこで最近のお庭事情を話したいと思います。

 我が家の庭の半分は食べられる野菜で占められています。花は嫌いではないのですが、目で楽しんだあとにお腹も満足すると、得した気分になりませんか? そのような理由であれもこれもと手を伸ばした結果、半分の土地が野菜に占拠されました。

 ここ二、三日は天候に恵まれていまして、菜の花となった春菊や酢味噌和えに最適なワケギを引っこ抜き、次の野菜の為に庭を耕しました。ミミズがたくさん出てきました。土の状態は良好で綺麗なうねを鼻歌混じりに作りました。

 連作にならないように植える野菜を考えないといけません。やはりトマトは欠かせない食材となります。夏の暑い時期に食べる冷やし中華にもってこいです。生で食べても美味しいですが。その日は畑を耕すだけで一日が終わりました。

 翌朝、畝は細かい足跡で荒されていました。私はぴんときて、土の中を探します。すると柔らかいカリントウによく似たフンが出てきました。猫でした。まあ、わからないでもありません。天然の猫砂みたいなものですから。注意深くフンを取り除いたあと、しっかりと耕して以前の状態に戻します。

 その日の夕方、また異変が起きました。丸いすり鉢状の穴が幾つもありました。近くでチュンチュンの声が聞こえます。スズメが砂浴びをしたことが容易に想像できます。私は以前、穴掘りの現場を目撃しました。

 スズメは両方の羽を使って砂を巻き上げます。身体に掛けて小刻みに身体を揺すって、羽に付いた寄生虫を振るい落としているのでしょう。同じ動作を続けていきますと、漏れなく丸い穴になります。しかも、再利用が可能でした。

 家の中から見ていると他のスズメが飛んできて、その穴を利用して砂浴びをしました。少ない労力で最大の成果を得る姿は微笑ましいというよりもしたたかに思えました。

 次々と同じ穴にくることで時に争いにも発展します。スズメの喧嘩を生で初めてみました。羽をばたつかせて威嚇いかく、または激しくさえずって追い払うのかと思いました。でも、私の想像を軽く超えていました。

 そう、あれは人間でいうところのドロップキックです。畝の穴の権利を争って一羽が飛び、急降下して相手のスズメを両足で蹴飛ばします。まともに受けた相手は吹き飛んで仰向けになりました。

 愛らしい姿で豪快な技を決めてくれます。ひっくり返った相手はジタバタと暴れて起き上がると、チュンと鳴いて飛んでいきました。覚えていろよ、とでも言っているのでしょうか。

 明日は一日、雨が降るようです。庭の争いはないでしょう。

 雨が上がったあと、また小競り合いが始まると思いますと、少し顔が緩んでしまいます。

 少しくらい庭の畑を荒らされてもいい、と思えるくらいに彼等は愛らしい姿を見せてくれます。エッセイのネタにもなりますし、我が家の庭は私にとっても憩いの場所になっています。

 程々の眠気がきましたので、今から寝ます。おやすみなさい。

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