第6話・もしかして期待した?
「あのオル……」
「どうしたの? ヨーコ」
「私の服はどこ? 着替えたいんだけど?」
「ああ。あれ。洗ったよ。大分汚れていたから」
にこにことオルは答える。洗うために脱がされただけで寝ている間に何かあったわけでないと知り、一度は安心したものの私は気が気でなかった。
着替えの服が欲しいと言おうとした時に、オルが顔を寄せてきた。
「その顔。誘ってる?」
「誘ってなんか……!」
顎をくいと持ち上げられたと思ったら、彼の顔が近付いてきた。
「きゃっ。何するのよ」
相手がキスする気だと思って片手で胸元をおさえつつ、空いた手で口元を押さえたら額にキスをされていた。
「……!」
「もしかして期待してた? きみは可愛いね」
オルがフッフッフと笑う。どうやらからかわれたらしい。振り回されたことが何だか悔しい。
「オルさま。よっぽどこの子、気に入ったんだね?」
「オルさまのお気に入りだね」
イチリン達が興味津々に注目していた。恥ずかしい。俯くとその背に彼の腕が回り、彼はイチリン達に、事務的に命じた。
「お前たち、下がっていろ」
「「は~い」」
イチリン達が部屋を出て行くのを見送ってから、彼の私を抱きしめる腕が強くなった。
「ヨーコはなんて可愛いんだろう。堪らないな」
「ちょっと、離れて……」
「嫌だ。ここから甘い香りがする。離したくない」
オルは首元に顔を近づけてこようとする。それに両手を突っ張って拒んだ。
「止めて。オル。お願いだから服を頂戴。着替えたいの」
「分かった。じゃあ、僕のお願いも聞いてくれる?」
何だか不安になってきたが、裸のままでいるのには抵抗があるし、服をもらえるならと頷いてしまった。
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