第5話・ここはどこ?


 ばたばたと騒がしい足音や、自分の側に誰かがいる気配で私は目を覚ました。自分が寝かされていたのは天蓋つきの大きくて広いベッドの上。光沢のある素材で出来た掛け布の肌触りがとても気持ち良い。それを押し上げようとして私は、自分が何も着てないことに気が付いた。掛け布の下の自分は裸で寝せられていたのだ。


──何で?


 裸で寝るという状況に覚えがない。昨晩のことを振り返り、彼氏に別れを告げられて部屋から追い出された後、美しい彼に出会ったことを思い出した。彼にここまで連れて来られたのは確かだ。


──まさかここラブホテルじゃないわよね?


 不安が大きくなっていく。行きずりの男相手に抱かれてしまったとか? うそ。あり得ない。どうしよう。

 取りあえず服を探すべく上半身を起こしキョロキョロ辺りを見回せば、自分が寝せられていた室内は洋室でどこか古めかしい感じがした。


「あ、起きた?」

「目が覚めた?」


 薄布を上げて、天蓋の外から覗き込んできた美少女二人と目が合った。一体どこから来たの? この子達。

 彼女達は見た目、年の頃は十二歳くらいぐらいで、二人は深緑色の髪をしていて、エメラルドグリーン色の大きな瞳をしていた。頭には花冠をつけて森の妖精のような印象を受けた。耳は尖っていて、その背には大きな透明の四枚羽が見える。それがとても良く似合いすぎていた。


「オルさま。起きたよ」

「この子、気が付いたよ」


 二人は双子のように顔立ちがよく似ていた。声も似ている。違うといえば髪と瞳の色の濃さぐらいだろうか。彼女らは不躾にまじまじと見つめてきた。私はシーツで胸元を押さえながら聞いた。


「あの? あなた達は?」

「イチリンだよ」

「ニリンだよ」

「こらこら。お前たち。いきなり近付いては駄目だよ。ヨーコが驚く」


 私に自分の名を答えると、少女達は振り返る。彼女らの後ろには天使のようなオルがいた。オルは黄金の羽を揺らして微笑みかけてきた。


「やあ。おはよう。ヨーコ」

「オル? どうしてここに?」

「きみが目覚めるのを待っていたんだよ。朝食にしよう」


 オルはベッドに腰を下ろしてきて、機嫌よく寝起きの私に抱きついてきた。そんなことに慣れていない私は戸惑った。

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