第4話・雅貴の馬鹿


 その晩、寝入る私の隣に入り込んでくる気配があった。ぼんやりとした頭で思う。


──雅貴?


 やっぱりあれは何かの間違いだったらしい。雅貴と美奈子が会っていたなんて。いつもふたりで喧嘩した後はその夜、雅貴の方からベッドに入り込んできていた。

そして抱きしめ合って仲直りをするのだ。寝返りをして彼と向き合う。彼の胸元に顔を押し付ければ遠慮がちに背中へと腕を回された。やっぱり雅貴だ。


「雅貴……」

「……こ。泣いているの?」

「だってあなたがあの子と一緒にいたから。あれは何かの間違いだよね?」


 湧き出した涙が眦から零れ落ちる。それを雅貴が唇で吸い取った。


「しょっぱいね」

「誰のせいだと思っているの?」

「ごめん」


 少しは彼を非難しても罰は当たらないだろう。それだけのことを彼はしてくれたのだから。彼の言葉に傷つき悔し涙を零すしか出来ない自分が惨めに感じた。


「雅貴の馬鹿。ばか、ばかばか……」

「ごめん。ごめんね」


 詰る私を彼は優しく抱きしめてくれた。普段の彼にはない優しさを感じた。


「もうどこにも行かないで。私の側にいて」

「勿論だよ。きみの側からもう二度と離れない」

「本当?」

「本当だよ。信じて」


 雅貴には裏切られたけど、その声音には信じてもいいような気がした。すすり泣く私を抱きしめる腕は緩むことなくいつしか私は瞼を下ろしていたようだ。

 翌朝、目覚めて驚くことになった。


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