第12話『追い詰められたそのときに』
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スキンヘッドの筋肉モリモリマッチョマンの作戦が上手く行き、俺は無事に荷物を届ける事に成功した。別に魔法を使った訳じゃない。いたって簡単なバカらしいトリックだ。
できるだけ警察を引き離し、トンネルに入る。そこの入口は外からは死角となっていて中を見ることはできない。
だからトンネルにあらかじめ用意してあった同じ車を別人に走らせ、俺はトンネルを走るトレーラーの中に隠れたってわけ。単純明快、それでもって効果は抜群だった。
デコイとなったもう一台の白いスポーツカーが出来るだけ時間稼ぎをしてくれている間に、俺たちは街を脱出。こうやって目的地に着くことができたんだが……。
「で、やっぱりこういう結末になるわけ?」
「悪いが、これも仕事なんでな」
「仕事か。それなら仕方がない。でもさ、俺もここで死ぬわけにはいかないんだわ」
ただ今ハンドガンが俺の頭に突きつけられている。
街から離れた周りに何もない自然豊かな川沿い。ここに例のグレゴリーがやってくるそうだが、肝心のそいつがまだここに到着していない。
とりあえずスキンヘッドのおっさんは麻薬を車から降ろし、そして俺は律儀にこの車の中で待っていた。そして銃を突き付けられちまった。
彼も依頼された身であり、傭兵の彼としては仕事を完遂しなくてはならない。
だが俺も、仕事を完遂しなくちゃならねぇんだよ。
じゃねぇと、エリカを助ける事が出来なくなっちまう。
「お互い、仕事を任された身としてさ、少しだけ話をしないか?」
「その気はない。俺はお前を殺し、仕事を終わらせる」
話し合う気ゼロかよ……。どうする? この状況は一体どうすれば正解なんだ? 俺はこんな危険な仕事をしたこともない。そもそもこめかみに拳銃を突き付けられるなんて体験生まれて初めてだ。
初めて体験することに対応するなんて俺にできるわけがない。俺はあまり器用じゃない方だ。何度も何度も繰り返し、繰り返して体に染み込ませるタイプの俺は、急なアドリブに弱いんだよ。
クソッ。俺は、ここまでなのか……?
すまねぇ、エリカ。俺はお前とドライブしてやる事が出来ないかもしれない。
「!?」
その瞬間――スキンヘッドの手が何かに貫かれた。
それは緑色に輝く杭の様な形をしたもの。たまらず銃がその手から離れ、足元に落としてしまった。このチャンスを見逃さず、俺は車から脱出し逃げる。
後ろからパンパンパンと乾いた音が聞こえたが、その銃弾は俺を貫く事はなかった。
「おいおいロディ。こんな状況に陥るとかマヌケにも程があるだろ」
「すまんなナオシ、助かったよ」
「き、貴様ら……」
「わりぃなおっさん。これも仕事だからさ」
車の中から聞こえてくるスキンヘッドのおっさんに、俺は冷たく答える。
これまでの窮地を助けてくれたのは間違いなく、このおっさんだ。このおっさんのおかげで、俺はここまでたどり付くことが出来た。
しかし、これはあくまでILAの仕事だ。グレゴリーや
「ナオシ、エリカは……?」
「……それが、監禁されてると思わしき場所にエリカちゃんがいなかったんだ」
「はぁ!? じゃあ、エリカは――」
冗談じゃねぇぞ。
何のために俺はお前にエリカを託したと思ってんだ。
「もちろんどこに行ったかを問いただしたさ。そしたら
「グレゴリーが!?」
「だから俺はダイナさんと共にここまで急いでやって来たんだ。お前が警察を巻くために同じ街をグルグル回っていたおかげで何とか追いつくことが出来たよ」
そうか。そういうことか。悔しいが、グレゴリーの奴がエリカを連れて行った事で俺の命が助かったと言える。何だよコレ、何で俺はそんなもんで助かってんだよ。ダメだろそれじゃ、エリカに嫌な思いさせたことで助かったとか、シャレになんねぇよ。クソッ……!
すると川の向こうからクルーザーが流れてきた。おそらくあれにグレゴリーが乗っているはずだ。俺とナオシは木の陰に隠れながら、奴が姿を現すのを待つ。
そしてクルーザーが止まる。そこから現れたのは拳銃などで武装した奴らだった。
「やられた!」
ナオシが思わずといった感じで叫んで、例の緑色に透き通っている剣を握りしめて飛び出して行った。
完全に油断してた。
だが、それは俺がどうこうできることじゃない。しかし、気を引き締めることくらいはできたはずだ。こんな、どうしていいか分からずに棒立ちすることは少なくともなかったはずだ。
こうなってしまってはILAの武装隊が一斉に突入するしかない。
銃弾が飛び交うここは、まるで戦場と化した。
ナオシの野郎は戦う術を持っているが、俺にはない。
外に出していた麻薬が奴らに奪われる。スムーズに仕事をこなしたグレゴリー側の奴らは、使い捨て上等とばかりにそこにとどまり続け、ILAを抑え込む。
そのとき、俺は見ちまったんだ。
例のグレゴリーらしき男と、エリカが一緒にいるところを。
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