第9話『その重みがのしかかる』
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ナオシの野郎に依頼してから三日ほど経った。
するとダイナ=オコナーが警告した通り、
作戦通り、渋々……という態度を取りながら俺はその提案を受け入れる。
俺が捜査の手助けをしていることを悟られてはいけない。
「アンタが、俺を監視する野郎か」
「あぁ、よろしくな」
俺は小汚いスラム街のトレーラーハウスにやって来た。
俺の監視をするとか言う男の名前は知らんが、とにかくスキンヘッドの厳つい男だった。
見た目がいかにもな悪党面をしていて、分かりやすい奴だな、と俺はのんきに考える。そうでもしないと、いつもの自分でいられずに捜査がバレてしまうかもしれないからだ。
「で、運ぶ荷物ってのは?」
「こいつだ」
そう言ってスキンヘッドの男は部屋の壁を壊して大きなボストンバッグを五つ程取り出し、外にある車にこれでもかと積み込んでいく。
白いスポーツタイプの車。俺のセダンとは違って2ドアのクーペ。
見た事ない車種だけど、名前はなんていうんだろう?
ライトはリトラクタブルで、べったりと低い車高、そしてボンネットには何やら穴が開いている。これは……空気を取り込むためのモノか? 何のためにこんなものが開いているんだ?
「なぁ、この車はなんていう名前なんだ?」
「さぁな。出所不明の怪しい車らしいが、性能はとんでもなく良いらしい。今回の仕事の為にわざわざ用意したんだから、壊さないようリーダーから釘刺されてるから気ィ付けな」
「それ、これからやること知ってて言ってるだろ。お前さんのリーダーはしっかりと笑いも取れる面白い奴なのかもな」
俺のその言葉に、スキンヘッドの男は反応しなっかった。ただ黙々と大きなバッグを車に詰め込んでいくだけ。
てか、こんなに詰んだら車重くて走りにくくなるだろうが。まぁ、だからこそ俺を無理矢理連れてきたってのもあるだろうが。
「で、積み荷は何キロあるんだ?」
「バッグ一個が約一〇キロ。全部でだいたい五〇キロになる」
なるほど。重いな、それは。
だが俺には関係ない。それだけの重さが加算されるなら、それに合わせた運転をするだけだからな。運転には、その時の速度によって、適切な操作が必ずあるんだ。ブレーキポイントとその踏み込み量、アクセル開度、クラッチ操作とシフトチェンジ、そしてステアリング操作。これら一つ一つが、そのスピードとコース、それとその場の状況に合わせた正解となる操作が必ず存在するはずだ。
俺は、日頃の運転からそれを“できるだけ”行っているだけ。
今日もそれを実行するのみだ。
「よし、積み終わったぞ。早速出発だ」
「分かった。まずはこの車の特性を知るためにある程度暴れるが問題ないか?」
「あぁ、それで仕事が達成できるなら問題ない」
そして俺とスキンヘッドの男は車に乗り込む。
視界がいつもより低い。だけどその分、安定しているはずだ。重心はできるだけ下にあった方が安定感が増す。これだけ低い車なら、走行安定性は高いはずだ。
エンジンをかけるためにキーを回す。スターターのキュンキュンキュンという音の後に、エンジンが始動し、アイドリング状態に入る。そのエンジン音はとても不思議なものだった。
普通ならドドドドド……という音なはずなのに、これは違う。擬音で表すなら「バーッパッパッパッ」という独特な音だ。平べったい印象があるが、この車のエンジンはどうなっているんだ? ピストンとは違う方式なのか?
クラッチを切り、シフトを1速へ。クラッチを繋げていざ走り出すと、その加速性能の良さ、そして回頭性の良さに驚きを隠せない。こんなにイイ車があるのに、ふさわしい乗り手がいないだなんて、こんなにも悲しい事があるだろうか。
「大体分かった。さて、行こうか。ナビゲーション、よろしく頼んまっせ」
「あぁ、最高の仕事を期待しているぞ」
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