第6話『ロディ=ピットマン』
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「おーう、今帰ったぜナオシ」
ナオシの野郎が営む何でも屋のジェネシス。
そこは本当に何でもやる職場で、この俺、ロディ=ピットマンは車に関すること担当になってる。
主な仕事はお客さんの送迎や荷物を運ぶ仕事、あとは緊急を要する車の整備だとか。
俺はバカな方だけどよ、一応これでも運転免許証と自動車整備士の資格は持っているんだ。だからナオシも安心して俺に仕事を与えてくれてるはず。
現に俺の稼ぎは多分、今のところココで一番だしな。
移動のための足を必要とする人は結構いるし、その足が壊れて困っている人も結構いる。
知り合いの整備工場で非常時に助っ人として助けに入るときは結構良い金貰ってるんだぜ? 俺はナオシみたいに頭はそこまで良くないし、戦うこともできない。
でも、ナオシとは違うアプローチの仕方で困っている人を助けてるんだ。
「お疲れロディ。ホント、荷運びだとか、じいちゃんばあちゃんの送迎ばかりの仕事で悪いな」
「なーに言ってんだよ。俺とお前の仲だろ? むしろ、こんな俺に仕事をくれるだけでもありがたいしな。あとは……そうだな。給料上げてくりゃあ、もっと良いんだが」
稼いだ金は一度ナオシの野郎に預けて、そこから給料として俺たちに与えられる。
この形態に別に文句はない。結局のところ、ナオシがいなけりゃあ、俺はここまで働いてないんだからな。仕事を与えてくれてるのはナオシの野郎なわけで、きっとあの事件がなけりゃ俺はロクデナシのままだっただろうし。
「それは……すまん」
「いやいやいや、ウソだよ。でもまぁ、実際、お給料上げるにはもっと頑張らなきゃいけないし。これから頑張ろうぜ、お互いに」
「ああ、そうだな!」
正直に言うと、俺はナオシの野郎の一番目の友達にして親友だと思ってる。
ナオシは唐突に現れた。
隣に住むお弁当屋さんの店員さんの家に住むことになったらしいナオシは記憶を失っていた。今じゃメッチャ頼りになる良い奴なんだけど、当時は弱い声で喋る気弱な奴だと俺の目に映った。
そりゃあ、記憶を失って、ここはどこなのかも分からなくなっちまって、知り合いもいないんじゃしょうがなかったかもな。
ま、優しい俺だし? できるだけナオシと一緒にいてやったさ。気を使って俺がたくさん面白いことに巻き込んでやってたけど、でも気が付けばナオシの野郎がリーダーみたいになってた。
アイツはクソみたいに善人でな、人が困ってたら放っておけない性格なせいで、逆に俺が巻き込まれる形になってた。ま、楽しかったからいいんだけどよ。
でもそのせいで、アイツは進学も就職もできなかった。
元からクソみたいな俺と違って、アイツは自分を犠牲にしたからそうなった。
しばらく姿を消したナオシは、なんだかフェルトとかいう銀髪の可愛い女の子を連れて何でも屋を営むようになった。小さくとも自分の会社を作る金がどこから出てきたのかは疑問だけど、まぁそんなことよりも、やっぱりアイツは人の助けを出来る仕事を選んだんだ。
そんな中、俺は仕事もせずにレースで稼ぐ日々。
レースと言っても公式なものではなく、非合法なストリートレースだ。
俺に追いつける奴なんていない。そう思えるくらいに、ここいらじゃ最速の称号を貰っている。俺がレースに参加するとなったら、隣でステアリングを握っている奴の顔が歪む。
俺が速すぎて勝ち目がないからだ。
正直、ストリートレースで稼ぐのも限界を感じてきたとき……彼女がやってきた。
これは、俺がナオシと共にジェネシスで働くきっかけのお話だ。
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