第16話 氷の割れ目
◇
今夜も出会った時のように雨が降っている。違うのはウリはもう出て行く必要は無いと言うころだ。
——ウリが来てから どれくらい経つんだろう?
湧いた疑問はミネラルウォーターが注がれる音と共に思考の外に流れて行く。夏は過ぎたと言うのにまだ暑い。おかげで裸に近い状態で眠ってしまっても風邪をひく心配はないが、雨に降られると蒸し蒸しする。ひと口ふた口 喉を湿らせたが、ボクは水の冷たさだけでは物足りなくなり、冷凍庫から氷を取り出して、グラスの中に落とし込んだ。喉を潤しながら間仕切りを取り払った部屋を見回す。ウリの私物が少しだけ増えた。
ウリに懇願された夜 ボクは、『ゲームが途中なんだ、しかも良いところで』そう紳士的に断った。ウリは呆気に取られた顔をしたがすぐに笑って、『絶対に童貞だよね』バスタオルを取り払ってしまう。
若く弾けるような肢体と滑らかな肌に、こちらもまだ若く、マグマのようにうねり流れている下心を抑えて置く事など出来ない。
じっくりとウリの思惑を推し量り、その時間の分だけウリの裸体を眺めたあと、薄桃色の突起を触るか触らない程度に親指の腹で優しく、ゆっくりと丁寧に何度かなぞる。耐え切れなくなったウリが『ンッ……』甘く切ない声を出して肩を震わせた。
その声を聞いて噴火した。
ボクが満足するまで、ずっと行為は続いた。途中で何度かウリの『ダメ…、ゆるして、もうイッたから』そんな、か細い声を聞いた気がしたが、ウリがまともに話せなくなるまで、ボクは激しく責めたてた。
——ウリを襲ったヤツと大差ない。
自分の欲望に対して自己嫌悪に陥ったが、ウリは満足そうにうつ伏せたまま、
『気持ち良かった。脳みそがセロトニン漬けになってる』
そう言って、幸せそうに眠った。
キッチンから見えないが、ウリは今も幸せそうな顔を枕に埋めて寝ている事だろう。その寝顔を想像して、先ほど思いついたイタズラが再び顔をのぞかせる。
——でも流石にルミナイトは、今は無いな。
諦めてボクも、もう少し寝ようとベット近くのサイドテーブルにグラスを置いたとき、溶けた氷がバランスの均衡を崩して、カランと冷たい音を響かせた。
その音に反応したようにウリが寝返りを打つと、美味しそうな白桃がまた
ボクは流れるように氷を含んで、冷えた唇を白桃の割れ目に口づけた
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