第11話 よくある展開

 間仕切りをして、引っ越してから初めて生まれたスペースに、ウリが洗濯物をところ狭しと干していく。

 途中までは何と言うことなくその姿を見ていたが、下着を干すタイミングでウリが振り向いて、


「ムッツリ、ヘンタイ、チキン」


 オリオンの3連星とは程遠い、3蔑称をボクに投げかけて来た。

 けれど当の本人は、ボクが貸したTシャツを1枚素肌に合わせているだけだ。ウリは持っている全ての衣服を洗濯してしまったのだ。筋合いの無いようなことを言われて、何かしら言い返したくなったが、酷いことを言われたので、ボクはウリの姿体と言動の矛盾を指摘する事なく、スゴスゴとベットルーム側のスペースに行き、その日の講義の準備をし始めた。

 

 講義は午後の、しかも最終コマの1つだけだった。

 気は楽だったが、たった1つの講義のために、この雨のなか沿線の道を歩くのは効率が悪いように思っていた。すると、


「どれくらいで乾くかな」


 干し終わったのか、ウリが天井から吊るされたパーテーションの向こうから声をかけてくる。


「分からないよ。こんな雨の中、そんなにギュウギュウに干したら、乾くのが遅くなって、生乾きの臭いがキツくなると思うよ?」


「なによそれ? なんで先に教えてくれないのよ。それよりも何でもいいから下も貸してくれない?」


 ウリはパーテーションの端から顔を出して、不満と質問とお願いを、これまた3つポンポンポンと放り込んでくる。


「そこから好きなものを使っていいよ」


 ベットルームに置いてある幾つかの小さな衣装ケースを指差しながら、ボクはぞんざいに答えた。ウリはボクのやっていることが、少し気なったのか、横目でチラリとボクの手元を覗き込むようにして通り過ぎ、衣装ケースの前でちょこんと座った。


「どれ?」

「一番右のケースにズボン類が入ってる」


 ウリは目の前の衣装ケースを見ながら。

 ボクは手元のプリントを見ながら会話をする。

 ウリがガサゴソと、狸が茂みの中で動き回るように衣装ケースを漁っているのを感じながら、ボクはプリントを見ていたが、


「ねぇ、ボクサーパンツ派なの? トランクス派なの?」


 見ればウリが下着の入った衣装ケースを漁っている。


「ウワァ、バカ」


 下着を漁られているのを知ったボクは驚いて ウリを制止する為、結構な勢いでウリに向かって行った。

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