第22話 椅子
◎若干いやらしい描写があります。お子様に読み聞かせの際は、十分にご注意ください。
俺はある会社の課長席の椅子。今日もまた憂鬱な朝が始まろうとしていた。
「おはようございます
「おはよう。あーあ……」
遂に課長の赤城が出勤してきたようだ。大きなあくびをしている。朝からなんてだらしのない顔だ。
赤城が椅子を引いた。そしてそのまま勢いよく腰を下ろす。ここからが最悪のはじまりだ。
「よっと」
赤城が尻を持ち上げた。毎日されているが、これだけはどうしても慣れない。今日も毒ガスに侵される。覚悟を決めたその時だった。
「赤城君」
「社長。おはようございます」
社長が部屋に入ってきた。先程までだらしなかった赤城が、姿勢を正して立ち上がる。
「君、来週から本部に転勤だ。通達を渡しておく」
「分かりました。ありがとうございます」
社長は赤城に通達を渡すと、そそくさと部屋を出て行った。受け取った赤城は、それを大事そうにかばんの中へしまっている。
それにしても嬉しい。これでやっと、毎朝の習慣だったおならから解放される。あれは苦痛で堪らなかった。もう無くなると思うと、心の底から安堵感を覚えた。
それにしても次来る課長はどんな人だろうか? あわよくば女だったら良いのに。俺は社員たちの会話を注意深く聞くことにした。
*
会社の終業時刻になった。残業などしないタイプの赤城は、そそくさと荷物をまとめて帰っていった。
結局まだ、次の課長がどんな人なのか分かっていない。引き続き、残業している社員の会話に耳を傾けていた。
会社に残っているのは、男の社員二人だけだ。すると、奥側に座っていた社員が立ち上がり、もう一人の所へ行った。
「なあ聞いたか? 次の課長女らしいぜ」
「まじで? 美人なのか?」
男はこんな会話ばかりだ。とか言いながら、必死で耳を傾けている俺がいる。
「それはそれは。とびっきりの美人らしいぜ」
「まじか! それは楽しみだぜ」
女課長。しかも美人。俺はこの言葉を聞いて、気分が一気に爽快になった。一体どんな美尻とご対面できるだろう? 興奮が止まらない。
もう少しの辛抱だ。先のことを考えると、残り一週間など屁でもなかった。
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