第21話 鍵

「これ何の鍵だったかしら?」


 私は長い間、押し入れに入れられていた鍵。今日になってやっと、ここの家のおばあさんが整理の最中に私を見つけてくれた。何年も同じ場所に居たから、相手である鍵穴が誰だったか忘れちゃったわ。


「これでもない。これでもない」


 おばあさんは家の中や周りをうろうろして、私の相手を探してくれている。しかし私にぴったりと合う相手が見つからない。


 そういえばこれに似た感じのお話が、人間界にはあるみたいね。ガラスの靴にぴったりな女性を王子様が捜すお話だ。私にも運命の相手が見つかるかしら? 私はそう思いながらおばあさんが見つけてくれることを祈った。


「あー。結局分からなかったわ」


 おばあさんは家中の鍵穴を当たってくれたが、結局私の運命の相手は見つからなかった。


「分からなかったから、元の場所にしまっておこう」


 おばあさんが私の入っていた箱を取り出し、しまおうとした時だった。


「あれは何かしら?」


 おばあさんが押入れの奥から何かを見つけたようだ。そして四つん這いになって、それを取り出した。それは私が入っていたものよりも大きな箱だった。


「あら鍵がついてる。それにしても重たいわね」


 大きな箱には鍵がついていた。私の運命の相手だろうか? おばあさんが私を鍵穴に差し込んだ。


「まあ。空いたわ。これの鍵だったのね!」


 しまわれる前に、運命の相手を見つけることが出来た。とても嬉しい。それにしても中に何が入っているのだろうか?


「ちょっとこれ、もしかしてお義父さんが残していった延べ棒かしら?」


 おばあさんが箱の中から、金色に輝く延べ棒を次から次へと出していった。全部で六本の金の延べ棒が入っていたようだ。


「これは凄いわ。帰って来たらお父さんにも言わなきゃ!」


 おばあさんはとても嬉しそうに、金の延べ棒を再び大きな箱にしまっていった。そして私を使ってしっかりと鍵をかけた。


 金の延べ棒がしまわれた後、私も元の箱にしまわれた。それにしてもおじいさんが帰って来るのが楽しみだ。


 私はとても誇らしい気分だった。ただの鍵ではなく、家宝の鍵だったのだから!

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