第23話 リモコン

 私はとある家のリモコン。一台のエアコンを支配下に置いているわ。私は物たちの間から‘‘リモコン様”と呼ばれている。みんな私をとっても怖がるのよ。何故って? 私の出した命令は、嫌でも従わなければならないからよ。


 というわけで今日も、私はエアコンの前でどっかりと座っていた。まあ私も物だから、椅子じゃなくてテーブルの上にね。


 するとその時、男が部屋に入ってきた。ここの家の人よ。いつ見ても地味な男なの。イケメンの家に行きたかったのに、それだけが唯一の心残りなのよ!


 まあそのことは置いておくわ。ここで言っても仕方ないからね。それにしても、外から帰ってきたようね。外は暑かったでしょ? さあ私を使ってエアコンをつけなさい。


「今日からスマホで操作してみよう!」


 私は男の言っていることが一瞬分からなかった。スマホってあいつらのことよね? 物の中では超エリートの! あいつらそんな事もできるの? 私は驚きの余り、男をじっと見つめた。


 男がスマホを操作している。そしてエアコンの方を見上げた。まさかそんなことまでできるはずがない。そう思った私は、エアコンを睨みつけた。


——ピピッ


「おおー。ついたついた」


 嘘。エアコンがついたわ。スマホってこんなこともできるの? もはや化け物じゃない! 恐ろしい。


 スマホで何でも済ませられたら、私は一体どうなるの? 捨てられるの? それだけは絶対に嫌よ! 私はまだイケメンに操作されたことないんだから!

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