第4話 紳士服

 僕は百貨店で売られている紳士服の一つ。とても高いブランドと値段を付けられて売られている。


 高いブランドがついているからプライド高そうに見えるでしょう? でも現実はとても過酷。近年、百貨店は売り上げが減少傾向にある。紳士服は特に売れないといわれているんだ。売れ残ったら最終的に捨てられる。その前に別の場所でノーブランドで売られることもある。僕は捨てられないか毎日ビクビクしているよ。


 数日が経過した。今日も誰か買ってくれないか他の服に紛れて待ってる。今日も周りにお客さんがいる気配がない。すると死角からひょこっと中年くらいの金持ちそうなお客さんが入ってきた。


「いらしゃいませ」


 店員さんが明るく言うと「お世話になります」とお客さんは言った。数少ない常連さんだろう。


 お客さんは、最初向こうの商品を試着していて、しばらくしてこちらに来てくれた。


「これ良さそうだ!」


 お客さんは僕を選んでくれた。


「試着してみよう」


「どうぞどうぞ」


 お客さんは僕を試着した。


「気に入ったこれにする」


 お客さんは僕を気に入ったらしく買ってくれた。やった! ついに売れた!! 僕はとても安堵した。


「ありがとうございます!」


 僕はたたまれてビニールに入れられた。服はその人の見た目を左右する。僕はこの人の良さをしっかり表現できるだろうか? 僕は、わくわくと小さな不安を抱えて大きな袋に詰められた。

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